ふたり回し

小説投稿サイトとは別に連絡や報告、画像の管理などを行います

捕食ー4

ヘリの設計をちょっと考えてた。

  戦闘の様子は他の画面に映らず、オペレーターの復唱だけがとめどなく積み上げられてゆく。基地内の敵は全滅、残存部隊は撤退を選択したらしい。ニコライ達が追撃を始めたところで、イワンから報告が入った。
「敵影を確認、南東より中型ヘリ3機が接近中!」
 陸軍の攻撃ヘリとは比べるべくもないが、アレクの知る限りボルゾイに対空ミサイルは積まれていない。
「以後右から順に金,元,清ね」
 エカチェリーナが声を張り上げ、ニコライを呼び戻した。余りの険しさに、オペレーター達の視線も集まっている。もしニコライが、この状況でも戦うことを選んだなら。そんな杞憂に躓いたのは、しかし、部屋の中でもアレク一人だ。
「遊撃隊、撤退を開始」
 何のことはない。これまでも、ニコライ達の作戦は一発かまして逃げろというものだった。淡々とした顔つきで、オペレーターはなおも続ける。
「中型ヘリ、第二防衛ラインを通過。間もなく本部も空対地ミサイルの射程に入ります」
 ボルゾイが先か。敵のヘリが先か。二番カメラの機影は、連絡を待っている間も見る見る膨らんでゆく。エンジンブロックに機首がぶら下がった、異様なシルエットだ。
「赤外線ジャマーを起動して。電源は?」
 非常電源で稼働できます。オペレーターが銀色のレバーを次々に上げた。レバーの上には小さなランプが輝き、青い光は小さくも頼もしい。
「親方から報告、エレベーターへの退避が完了しました」
 収容が告げられるや否や、エカチェリーナは回線を整備班に繋がせた。
「エレベーター下して、早く!」
 画面に光が広がった。ミサイルの炎か。
「第六妨害装置、停止。目標清のミサイルが着弾したものと思われます」
 そんなことより、問題はニコライの安否だ。尋ねる前に、オペレーターが振り向いた。
「無事収容完了しました」
 長い溜息の後、エカチェリーナはコンソールに手をつき、再び画面を覗きこんだ。冷ややか光が、端正な横顔に疲れの影を落としている。
「中型ヘリ、3機とも退いていきます」
 どうやら味方を逃がすこと以上の役割は与えられていないらしい。暗い部屋の中に、ささやかな歓声が満ちた。
「第二陣の攻撃が予想されます。敵の偵察、中でもヘリを引き続き警戒して」
 無線を切ると、エカチェリーナは誰にともなくぼやいた。
「ここももう店仕舞いね。夜逃げの準備をしなくちゃ」