ふたり回し

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LAC-9 PuntGun

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揚陸手段が戦車揚陸艦からドック式揚陸艦に変化したことで、海兵隊の車両展開能力は安全性と引き換えに大きく制限されてしまった。

エアクッション揚陸艇の輸送能力には限界があり、また水陸両用車は航行速度が低く、兵員輸送に主眼が置かれ火力も自衛用の域を出ない。

上陸部隊の脆弱性は以前から問題視されており、またヘリボーンが兵員輸送の主流となりつつあったことからも火力、水上速力に優れた水陸両用車の新規開発が始まった。

 

開発計画立案当初に行われたのは、上陸手順の再構築である。

敵前上陸を避け、警備の手薄な海岸から上陸して陸上を進攻すること、また本隊の上陸に先立ち、攻守の充実した地上部隊が上陸地点の安全を確保することが結論付けられた。

このプランにおいて新規開発車両には、敵による発見を遅らせるため夜間の半潜水航行により海岸線へ接近、上陸後は速やかに展開して前線を構築し本隊の合流までその場で敵の即応部隊に応戦するという複雑な役割が与えられた。

 

設計にあたっては水中での性能が重視され、車体は鋭い舳先とV字型の底面を持ち、航行時には懸架装置ごと車輪を跳ね上げて車体脇の窪みに収納する。

さらに車重軽減や走行速度の向上のため装輪式を採用したことでMRAPに近い構造となり、副次的に地雷による被害の軽減につながった。

車体前部に水平対向6気筒ディーゼルエンジンを搭載、半潜水時にも十分な吸気を行うため大型のシュノーケルと軸流式の過給機を備える。

ホイールは六輪全て駆動するが舵輪は一列目のみ、重心が前方に寄っているため、一列目にはブレーキが装備されていない。

またノーズ下側にはアレイ式のアクティブソナー、車体後端には油圧モーターで駆動する大型のアジマススラスターを備え、夜間でも岩礁や機雷を巧みに回避することができる。

 

車体上面は半潜水時の発見を困難にするべく扁平な多角形状とされ、潜水したまま周囲の索敵を行えるようRC銃座に攻撃ヘリコプターと同規格の多機能カメラが装備された。

車長が機銃用のカメラを独占していることから、専属の機銃手は搭乗せず車長が機銃手を兼ねる。

ハッチから頭を出すことが出来ない分、それ以外にも各所に赤外線カメラを装備することで視界を確保しつつ、夜間戦闘能力を充実させている。

窓がなく大画面の液晶パネルが並んだ車内は公開当時雑誌などでシュミレーターのようだと話題となり、時代の変化を実感させるものであった。

 

主兵装には対戦車ミサイルも検討されたが、機甲部隊と正対しての砲撃戦に対応すべく55口径120mmの滑腔砲を装備。

車体形状や水中用装備の影響で車高が増し、装輪式で横方向への安定性が低いことから本車が砲塔を装備するメリットは少なく、重量と車高を抑える効果を見込んで西側としては珍しい駆逐戦車のレイアウトがとられた。

半潜水時、鋭角の舳先から長砲身が飛び出している特異なシルエットは、ボートに固定された鳥撃ち用の大型散弾銃、パントガンに喩えられる。

 

本車は装甲面でも敵主力戦車に対抗する必要があり、前面にはセラミックと鋼鉄による複合装甲が施された。

側面からの攻撃に対してはアクティブ防御システムが実装されているが、装輪式である分通常の駆逐戦車よりもさらに回頭性が低く、機動戦に対応することは難しい。

車両間の連携や狭所、稜線を利用した伏撃、夜間戦闘能力を生かした奇襲など運用には機動戦を避ける工夫が求められる。

 

LAC-9の配備後に大規模な水陸両用作戦は実施されていないが、寧ろ小規模な作戦では主力戦車の投入は不要として本車とヘリボーン、対地攻撃の協調のみで拠点制圧が行われる。

優れた水上航行能力を活かして湾内や河川へ侵入し内陸部で上陸することも可能であり、本車の存在そのものによって敵部隊は戦力の分散を強いられる。

また発見されにくい特性に着目した海兵隊から要望があり、特殊部隊向けに少数のLAC-9が兵員輸送型のLVPT-9に改修された。