アーレイ・バーク級駆逐艦の大量配備を最後に、戦闘艦の開発は大型、集約化と小型、分散化の間で右往左往し続けてきた。
予算不足によりアーセナル・シップ計画が立ち消え、撃沈による損害の低減を図った沿海域戦闘艦は国際情勢の緊迫化に取り残されつつある。
強力な戦闘艦が要求された結果次期主力艦としてズムウォルト級駆逐艦が開発されたものの、装備の増強に伴いコストや船体の規模は巡洋艦クラスに肥大化、本格的な量産には結びついていない。
低コストと高性能を両立を目指した結果、アーセナル・シップのコンセプトを大火力化ではなく船体の小型化に結び付ける分割戦闘艦構想が生まれた。
VLSのみならず、ヘリポート、貨物室、船室、CICを5種の単機能コルベットに分割、データリンクを介して一隻の巡洋艦として機能させる。
分割により船体規模はミサイル艇並みの規模まで縮小、各型のコンポーネントを最大限に共有し、また単艦で警備艇として利用可能な対潜・掃海型から生産することで、導入コストを大幅に低減できるものとされた。
こうして沿岸警備隊に導入された一号艦が単機能コルベット、ダイバーシティである。
小型化にあたって排水量の確保するため、本級は小さいナックルをもつ500tクラスの滑走船である。
複合素材の船体は軽量で腐食に強く、内部の要所にはチタン製の装甲が施された。
軽量化の為主機はガスタービン、大型コンデンサを利用し巡行時に発電機を停止可能にしたデッドウェイトの少ない統合電気推進がとられている。
単機能コルベット間での乗り換え、積み替え作業を容易にすべく、推進機にはダクト付アジマススラスターが選択された。
スクリューには永久磁石電動機が直結され、機械接続箇所の削減を図っている。
積極的な攻撃を行うのはVSL型のみだが、各型は共通の自衛火器として前部甲板にブッシュマスターⅡ30mm対空機関砲とRAMの21連装発射機を装備する。
またマストの前後に電子妨害能力が増強されたAN/SQL-32(V)7を搭載し、対艦ミサイルへの防備も駆逐艦と比較して遜色がない。
レーダー下のダクトは吸排気口で、赤外線の放射を低減するため水令式の冷却ジャケットにより排気温度を抑制している。
またマストやロッドアンテナには傾斜角が付けられ、電磁波の反射方向を制限された。
最初に導入された対潜・掃海型は、機能の殆どを艦載ヘリコプターに依存している。
船体の後半部が全てヘリポートにあてられ、三方に展開式の天井を装備することで簡易的な格納庫とされた。
最大二機のMH-60Rを搭載し、対潜哨戒や攻撃、掃海を行わせることで船隊を水中の脅威から保護する。
ヘリコプターに搭載された魚雷に加え、敵位置情報をVLS型と共有し、アスロックによる攻撃を行うことも可能。
単機能コルベットの中では最も自己完結性が高く、初動として生産ラインを確立し他型のコスト引き下げることに貢献した。
対潜・掃海型に次いで開発された宿泊型は、船隊の中で補給型と共に駆逐艦母艦の役割を担う。
生活空間の集約化はMFC小型化の鍵であり、宿泊型は本格的な食堂と多数の寝台、医務室や真水の精製装置を備えている。
勤務時間外の乗組員をまとめて収容でき、MFCのみでの外洋での活動や長期任務が可能となった。
広い食堂や屋上の甲板など小型艦らしからぬ開放感があり、空母と比較しても遜色がない。
対潜・掃海型と宿泊型のロールアウトによってMFC全体の運用及び開発の足掛かりが出来上がり、海軍は相次いでVLS型とCIC型の開発を進めた。
特にVLS型はアーセナルシップ構想の原点にあたるバリエーションであり、CIC型不在でも早期警戒機や友軍のイージス艦から目標指示を受けることで射程を活かすことが出来る。
後部甲板のVLSは4×6セルのコールドランチ式、トマホークからアスロック、シ―スパロー4発と幅広いミサイルに対応。
船隊内のVLS型を調整することで任務に応じた火力を発揮することも出来、運用に柔軟性が生じた。
CIC型はそれ自体作戦遂行能力は持たず、船体の大部分を発令所を含むイージスシステムが占める。
固定式のフェイズドアレイレーダーを搭載するためマストが大型化、全バリエーションの中で最も共通部品が少ない。
ブリッジ後部のスペースは発令所に割かれ、MFC船隊の指揮や要撃の要請を行う。
CIC型の完成によってMFCの船隊は巡洋艦に相当する完結した作戦遂行能力を獲得、前線での様々な任務への投入が開始された。
最後に調達された補給型は、弾薬庫や燃料槽、食糧庫の機能を外部化したものである。
船体後部はシャッターを備えた倉庫と甲板からなり、倉庫の上部には甲板から他のMFCへと貨物を積み下ろすためのデリックが装備された。
デリックは特にVLS型へのミサイル装填に力を発揮し、燃料補給時にホースを渡す際にも利用される。
補給型の配備により船隊-事前集積船間の輸送が可能となり、MFC船隊の行動半径は飛躍的に拡大した。
また補給型は工作艦としての役割を併せ持ち、搭乗した整備班は僚艦への補給の際に点検を行い、故障、被弾が発生した際には艦ごと応急修理に駆けつける。
MFCは操舵手や構造材の需要を押し上げたため試算程の量産効果は得られなかったものの、単価の低さから途上国への輸出が実現し財政面での負担は大きく軽減された。
加えて大胆な戦力の分散、集中を可能にしたことから、実働戦力を落とさず海軍全体の運用コストを引き下げたと評されている。