対空砲火と電子妨害の激化に伴い、解放軍陸軍は複合的な防空網に対応可能な有人襲撃機を必要としていた。
Su-25系列はグルジアの離反により生産体制が脆弱化し、かつての重装甲も最新の対空火器に耐える頑強さは持ち合わせていない。
陳腐化した攻撃ヘリを代替する機体も必要であったことから、陸軍主導で襲撃機の新規開発計画が立ち上がった。
開発にあたって重視されたのは、重装甲化と離着陸能力の両立である。
表面積の節約と主翼の大型化の両面で翼胴融合が有効と判断された一方任務の性質上ステルス化は求められず、分厚い矩形翼に機首と尾部だけが付属する、G.38に類似する奇抜なハルピン飛機工業集団の図案が採用された。
数か月後完成した1/3模型は風洞、飛行試験ともに良好な離着陸性能を示したものの、着陸時に激しい機首上げが発生するトラブルが発生し予算の取り消しが取りざたされてしまう。
開発チームは突貫工事で模型のテイルブームを延長、辛うじて予算審議委員会を説得することに成功した。
強撃七型の外見上の特徴は、エンジンを内蔵した分厚い主翼である。
当初はターボプロップも検討されていたが、プロペラの脆弱性や破損時のヨーイング発生が問題視され、全体を内蔵できるターボファンが選択された。
直径80cm未満のAI-222を選択して主翼の厚みを抑えつつ、4発化することで破損のリスクを分散している。
また空中待機時には4基中2基を停止させることで連続飛行時間を6時間まで延伸可能。
スロットル全開時の合計推力は112kNに達し、小型機ながら最大4tの爆装を実現した。
エンジンの内蔵により必然的に翼厚、翼弦長が肥大化した分、他の面で主翼の抗力を軽減する工夫が図られている。
第一に翼幅を短縮し、過流による揚力の損失を抑える大型のウィングチップが装着された。
ウィングチップ後縁は左右に稼働し、方向舵としての機能も併せ持つ。
また水平飛行時に抗力が少なく大仰角飛行時に失速が抑えられるよう、上面のキャンバーを大きく取ったそろばん型の翼断面形状が採用された。
大きなキャンバーに加えて高揚力装置も充実し、本機は平坦な空き地があれば滑走路を必要としない。
エンジンからの排気が後縁の二重間隙フラップ上面を流れるようレイアウトされ、前縁のスラットも幅広に設計されている。
重装甲化にも妥協はなく、底面のモノコックにはチタン合金が用いられ、エンジン同士がニッケル製の桁材によって仕切られた。
桁材の間にはさらに主脚が格納され、片方のエンジンが爆発した際にもエンジン上のパネルが吹き飛ぶ以上の破損は発生しない。
各エンジンと燃料槽は自己消火システムを備え、AIM-120の直撃を受けた機体が任務を続行し無事に帰投した事例がある。
チタン装甲の内側はボロンカーバイドのタイルで覆われ、上面や後部のモノコックにも強固なハニカム構造の複合素材が使用された。
キャノピーには厚さ60mmの防弾ガラスを使用し、コクピット下部は厚さ20mmのジュラルミンにより防護されている。
本機はソフトキルも充実しており、一般的なフレア、チャフのディスペンサーに加え翼端には指向性赤外線妨害装置を搭載した。
短距離のみならず中距離以遠のミサイルを防ぐため、右端のハードポイントには通常L-175V電子妨害ポッドが懸架される。
投射兵器の運用が重視されたため、内蔵火器はコクピット右側のGsh-30-1一丁のみ、左側には給油プローブが装備された。
底面には全9カ所のハードポイントを持ち、空対地ミサイルからロケット弾ポッド、空対空ミサイル、クラスター爆弾に至るまで幅広い兵器に対応している。
中でも第3,第5,第7ハードポイントにはYJ-91対艦・対レーダーミサイルの搭載が可能で、これが海軍への配備に繋がった。
地上の警戒も本機の重要な役割だが、レーダー手や管制官が搭乗できる改造機は存在しない。
指揮系統のネットワーク化の一環として、警戒機は索敵だけを行い、敵位置情報を友軍のCICと共有する形式がとられた。
警戒ユニットは左右のハードポイントに装着するバランスビーム型レーダーポッドと発電機付電子計算機ポッドからなり、脅威度の評価などもある程度自動化されている。
また計算機ポッドはソフトの切り替えにより電子攻撃への流用が可能で、頑強なことから防空網制圧への適性も高い。
完成した試作機第一号は耐久試験にて驚異的な性能を発揮、爆装した状態での短距離離着陸を披露し、まず陸軍が200機の調達計画を提示した。
強撃七型の導入に伴い攻撃ヘリのパイロットを固定翼機に転向させるプログラムが実施されたが、プログラムからは脱落者が続出。
結局パイロットの半数は空軍から部隊ごとJH-7のパイロットを編入することで賄われた。
本機の公称「鯪鯉」はセンザンコウのことで、爆撃で地上を掘り起こすこと、機体に施された重装甲に由来する。
安価なエンジンを搭載した小型機ということもあって一機当たりの調達コストは1000万ドル以内に納まり、そのおかげで量産効果が生まれるという好循環を生んだ。
本機が耐久性を発揮したのは、配備から5年後に起きたバルチスタン紛争への軍事協力である。
対空砲火をものともせず一方的に地上部隊を蹂躙する様は両陣営において伝説と化し、独特なシルエットも相まりメディアが取り上げる機会も多い。
紛争地では制空戦闘が発生する機会が少なく、本機は不死身の攻撃機として途上国への輸出が進められている。