ふたり回し

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HALL-1 नंदी級 エアクッション揚陸艇

バルティスタン紛争への介入に際し、インド海軍最大の課題となるのは水陸両用部隊の近代化である。

派兵先が近いことから、当初はポモルニクエアクッション揚陸艇のライセンス生産が有望視されていたものの、中ロが同盟関係を結んだためロシアがパキスタンへの配慮を見せたこと、またインドのQUAD参加が原因でロシアの協力は大きく遠のいた。

米英の強襲揚陸艦はインドにとって重厚長大に過ぎ、また艦載用の揚陸艇は単独で運用するには航続距離や耐航性が不足している。

インド政府は産業育成も兼ね、米テキストロン社の協力の下外洋を航行可能なエアクッション揚陸艇の開発に踏み切った。

生産元にはヒンドスタン航空機が選ばれ、2年後に完成したのがHALL-1揚陸艇である。

インド海軍に所属する揚陸艦の慣習に則り、HALL-1にはシヴァ神が乗る聖牛、「नंदी」ナンディの名が与えられた。

 

エアクッション揚陸艇の航続距離は、浮上用エンジンの燃料消費によって大きく制限されている。

本級の開発にあたっては、底面積を大きく、重量と積載量を削減することで浮上に要求される圧力を軽減、浮上用のエンジンパワーを節約することが期待された。

格納庫は短縮するため進行方向横向きに、船体は凌波性を改善すべく前後に長い楕円形をしている。

軽量化のため船体には複合素材が多用され、船内には最低限の設備しか施されていない。

単独での連続航行は8時間が限界であるため休憩室も持たず、自衛用の火器も11連装のRAM発射機のみに絞られた。

電波吸収材やステルス船形も取り入れられているものの、運用時には友軍による護衛が必要であり、多くの場合交代要員も友軍艦に搭乗する。

空荷であれば航続距離が大幅に延伸するため、遠洋への派遣にあたってはLo-Lo式の輸送艦に随伴し上陸地付近での搬入を想定している。

 

またHALは機関部の簡略化を重視し、機械式の伝達機構を極力省略した。

圧縮機の構造を簡略化すべく縦置きされたF124のファンから直接抽気し、船体下に排気することで浮力を増大させる。

貨物積載量は96tに迫り、T-90Sやキャスパーならば二両、BRDM-2ならば三両、ジムニーならば6両を輸送可能。

出力よりも効率や回頭性を優先し、T64-GE-P8Bを内蔵したアジマススラスターが装備された。

スティックによる直観的な操作を元にアビオニクスが左右60度のスイングとプロペラの可変ピッチを制御、左右への平行移動も可能なためバウスラスターは搭載していない。

船体規模に比して主機の出力は4,300shpに留まるものの、直結による効率化や低抵抗の船体に助けられ最大60ノットで航行する。

 

実際にHALL-1の運用が開始されると、本来想定されていた単独での輸送任務ではなく、輸送船団に随伴しての上陸支援が大きな話題を呼んだ。

ウェルドックを備えた専用の強襲揚陸艦を配さずとも汎用の輸送艦とHALL-1の協調だけでMBTの輸送が可能。

加えて少量の輸送艦に対してHALL-1を大量に動員することもでき、短時間での上陸、布陣が実現した。

旧式のLSTを運用している途上国にとって中古の強襲揚陸艦はあまりに高額であり、乗り換え先としてHALL-1には大きな期待が寄せられている。

 

ところが商機を見出したテキストロン社は協力の見返りとして第三国への販売権を主張、米国内で生産した同型CLAC-102を無断でフィリピンに納入。

当然のごとくHALはテキストロン社を提訴したものの米国内での裁判では知的財産権侵害の判決は得られず、今だに解決の見通しは立っていない。