現代的な砲撃戦ではアウトレンジ攻撃が重視されるが、榴弾砲の射程には限界があり地対地ミサイルは調達数や輸送に難がある。
その点で自爆型ドローンは対地ミサイルよりも安価で自走砲よりも射程が長く、今後支援火力の主軸を担う可能性が高い。
イスラエル国防軍は大型の弾頭を備え簡易的な装置で離陸できる自爆型ドローンの開発を計画し、調達元には無人偵察機オービターの開発実績があるエアロノーティクス社が選定された。
本機は航続距離を確保するため推進力は速度維持に必要十分なだけにとどめ、120mm迫撃砲からコールドランチし初速を得る。
高コストで重い折り畳み機構を避け、本体が砲身外に露出したスピガット式が取られた。
砲身に差し込む装弾筒部分は装薬を内蔵し、射出後は接続部のソケットが左右に分離する。
既存の装備が流用可能なため各国への導入が容易で、既に複数の組織が調達に向けて動いている。
衝撃に強い頑強な躯体を志向した結果円盤翼に近いコンパクトな形状に仕上がり、特異な外見から社内では専らブリスケット=バラ肉と呼ばれていた。
主翼内には240cc直列三気筒エンジンが向かい合わせに横置きされ、翼端のプロペラは過流を相殺し揚力を増大させる。
汎用の車両でも運搬可能な重量76kg、翼幅230cmの機体ながら、弾頭重量21kgの大火力を実現した。
弾頭には破片榴弾とタンデムHEATの二種類があり、機甲戦力にも打撃を与えることが可能。
翼面加重が高いため失速限界は180km/h、最大320km/hで飛行し、連続飛行時間は1時間と短いが通信距離が100km以内なので大きな問題とはみなされていない。
目標を捕捉後は自機に搭載されたイルミネータで照準、目標を追尾し突撃するため、攻ロックオンの後は通信が途絶しても攻撃を続行できる。
専用の車両を必要としない手軽さから導入はスムーズに進み、アゼルバイジャンやサウジアラビアへの輸出も内定している。
人力での装填は負担が大きいため、装填した状態で牽引できるよう砲口側に車輪を持つ射出装置が新造された。
ロットの拡大に伴い当初45万ドルであった調達コストが30万ドル近くまで低下し、ブロック2からはセミアクティブ誘導機能が追加されている。
並行して開発された索敵、照準専用のブロック3は単気筒エンジンの採用によって大幅に軽量化され、長時間のロイター飛行を実現した。
弾頭の代わりに衛星通信用のアンテナを内蔵し、見通し線の範囲外で最大8機まで僚機を誘導、目標指示できる。
複数機の同時運用を目的として、砲身の展開機構とレールによる自動装填機構を内蔵する専用トレーラーの開発計画がIMIから公表された。