ふたり回し

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拒絶ー13

話の進まないシーンが増えてる気がする……

 

 言い訳とは裏腹に、眠気よりも早く明け烏が迎えに来た。錆びだらけの頭に、野太い割れ鐘はよく響く。目が冴えるばかりで碌に物を考えられず、起き上がろうにも体に力が入らない。なんという体たらくだ。約束を果たせず徒に綱渡りをさせてしまったというのに、謝るどころか無事を確かめることさえできなかった。
「オハヨ、どう? あの後眠れた?」
 アグラーヤは珍しく、昼過ぎに顔を出した。理由は聞くまでもない。アレクも人を責められた身分ではないが、この期に及んでお姫様でいられるにもある種の才能が必要だろう。あくび交じりの世間話にも情勢の影は垣間見えるもので。弱々しく相槌を繰り返しているうちに少ないながらピースが集まってくる。実働部隊は見張りのために山中を巡り、怪我が治って復帰した隊員も出てているそうだ。レフ達は水道を復旧させようとしているものの、資材が思うように手に入らないという。
 強いて一番肝心なことを挙げるなら、しかし、その中によそ者の話が含まれていないということだ。むしろカルラが見つかっていたなら、アレク自身が問い詰められない筈がない。
 アグラーヤの話した通り昼過ぎにはレフも見舞いに訪れ、自動車をいつ用意するのか相談を持ち掛けてきた。
「とりあえず、今日はゆっくり寝させてくれ」
 目に隈がある理由を訊かれ、迂闊にもアグラーヤに目が向いてしまう。アレクったらさ、抜け駆けして一人でどっか行こうとしてたんだよ。告げ口されてレフまでi訝しがるようでは、さすがに白を切り通せない。
「うまく鍵を開けられるか、ジッケンしてたんだって。ガチで困ってたのはめっちゃウケたケド」
 レフの目には、小馬鹿にしただけのように見えただろうか。アグラーヤは底知れない笑みを浮かべてアレクに目を遣っただけだ。
「ま、よかったじゃないの。本番じゃなくて」
 失敗は練習のうちにしておけってね。俺様式のライフハックを披露し、レフはアレクを慰めた。アグラーヤは黙ったままおもむろに昨日のライターを取り出し、まるで重さを確かめるように何度も小さく投げ上げては宙で掴み取っている。使い捨てのライターにねっとりと絡みつく仄暗い眼差しに二人も言葉を失ってしまい、安っぽい音だけが夏の終わりの隙間を満たした。
 急ぐ必要があるわけでもなし、二日後にでも車を手配出来たら、レフが教えに来てくれる。当の発案者に興味さえ見られないことは幸い大した問題にならず、気まずい雰囲気もあいまってその日は早々にお開きとなった。