ふたり回し

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BAe Chip In

 

英陸軍航空隊の兵員輸送は旧式化しつつある回転翼機に依存しており、機動的な展開は大きな危険を伴う。
輸送ヘリの近代化に際し、BAeシステムズは回転翼を外装せず秘匿性の高い垂直離着陸機を提案。
開発計画への出資が承認され、対立候補であるアグスタ・ウェストランドの機体とのトライアルが実施される運びとなった。
コスト、積載量、航続距離いずれにおいてもBAe側のP.152-4は対抗機種に劣っていたものの、陸軍は巡行性能よりもRCSに重きを置き、P.152-4を次期兵員輸送機に選定している。
しかしながらP.152-4の航続距離の短さは最低限の水準にも達しておらず、二度の再設計を経て大型のスタブウィングを備えたp.152-6に至って漸く審査を通貨、陸軍航空隊の軽輸送機として80機が発注された。

当初正式名称は通例を踏まえアルバトロスとなる予定であったが、他社の機体と重複を避ける意図でチップインと名付けられた。

 

本機は計10組の同軸反転式リフトファンを駆動して飛行する垂直離着陸輸送機である。

リフトファンは胴の両側のナセルに内蔵され、ナセルで幅員が増加した分機体の概形は幅広な箱型となった。

モノコックにLバンドの吸収率に優れた複合素材を使用し、各面を水平方向に対して傾斜させているため、同高度へのRCSは救命用の浮き輪より小さい。

ナセルのインテークは露出を避けて内側に向けて開口し、ノズル側では6枚のパドルが推力を後方へ偏向する。

優れた秘匿性と対照的に、推力は複雑な駆動系の犠牲となった。

最高速度は貨物を含めた重量に依存し、全備重量と同等の15tならば612km/hで巡行可能な一方、最大離陸重量と同等の22tならば259km/hと一般的なヘリにも及ばない。

 

メインエンジンであるAE1107Dは機体後部にマウントされ、直結したプロペラシャフトを駆動する。

各ギアに負担を分散させるため、リフトファンは個別にプロペラシャフトと機械接続された。

前部に配置された横向きのシャフトは左右のプロペラシャフトを同調させ、片肺でも貨物を積載したまま高度数メートルを飛行可能。

インテークはエンジンポッド外側に位置し、後端で逆転した吸気はエンジン内を後方から前方に向かいナセル内の外気と混合された後に排出される。

 

本機は揚力を補完すべくナセルの左右に全遊動式のスタブウィングを装備し、巡行時に推力をより後方に偏向させ、また滑走することで公式の最大積載量を上回る25tでの離着陸を成功させた。

左右の垂直尾翼は9度ずつ内側に傾斜し、浅いV字型の水平尾翼によってつながっている。

乗降口は後部ランプと機首左右の3か所、いずれのドアにもファストロープが装備され、後部ランプにはドアガンとしてM2が搭載された。

通常35人程度の兵員と装備を搭載し、kuバンドレーダーとFLIRを併用して視認されにくい夜間のヘリボーンに従事する。

最大離陸重量が少なく積載可能な装備は汎用輸送車程度に限られ、重装備の輸送への適性はない。

被発見時にはチャフ・フレアの他、四隅のIRCMにより対空ミサイルの誘導を妨害する。

 

陸軍は配備の公表自体が本機の秘匿性を損なうと判断し、トライアルの結果をアグスタウェストランドの勝利に偽装した。

対抗機種も予算の膨張により開発が中止されたと発表があり、その後20年に渡りP.152は表舞台から姿を消している。

AW159の延命が報じられる裏で初期生産分の20機が陸軍航空隊に納入された直後に艦隊航空隊も12機を発注、以降も順次配備が進んだ。

高い秘匿性は潜伏先でのテロリストの確保や大使館職員の救出など小規模な作戦で真価を発揮し、非公開の機体の投入が指摘されたことも少なくない。

本機の存在が明るみに出たのは実践投入からも数年が経過した後、アルゼンチンでの人質救出作戦に参加した艦隊航空隊所属機が民間人に撮影されたことが原因である。

同クラスの人員輸送機の3割以上が本機に置き換わりつつあることもあり、海軍は本機の情報をメディアに公開した。

通常の輸送任務においても生存性の高さは有利に働き、フランスやドイツ、日本など一部の友好国を中心に少数ながら輸出が検討されている。