ふたり回し

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擬似対談とパノプティコンその1

公式hpをはじめ、さまざまなサイトで見かけるようになった「擬似対談」。

ここ数年のネット上の意思表示の様式の変化が、

極めて鮮鋭な形で表れているように思えます。


・擬似会談とは何か

私がここで擬似対談と呼ぶのは、

ひとりの書き手による対談形式の文章のことです。

複数のキャラクターにめいめいのセリフをあて、

時に掛け合いを混ぜ込みつつ、論を展開するのが特徴で、

多くは雑誌のインタビュー記事の形をとり、

教科書のコラムや、テストの問題にも登場することがあります。


・双方向的なパノプティコン

私は、この擬似対談が生まれた背景に、

ネット上の表現、それも、個人のレベルでの表現の変化があると睨んでいます。


2000年代前半までのネット上の交流は、チャットや掲示板といった、

直接的な接触のある手段に依存していました。

ウェブログもまだまだ普及が進んでおらず、

無料レンタルサーバーもあまり見掛けなかったように思われます。


変化が起こり始めたのは、おそらく00年代中頃でした。

掲示板の人入りが減る一方でウェブログやその他の個人サイトが増え、

個人の言説は、マスメディアと同じ、一体多の表現になっていったのです。


本来出版物のもっている、

「ひとりの書き手が不特定多数の読み手によって解釈される」

パノプティコンを逆向けにしたような構造は、

ネット上の情報についても、ほぼ同じです。

ただ、一つだけ違うのは、現在のネットにおいて、

不特定多数の読み手が、同時に書き手になりうるということ。

市民が互いに誰のものでもない視線にさらされ、

同時に透明なまなざしを投げかけている、双方向的なパノプティコン

それが、今のネット社会の姿なのです。


一対一の、方向性を持った表現から、

多対多の、方向性を持たない表現へ。

読んでいる人間。発信先のあるメッセージから、

発信先をもたない、拡散したメッセージへ。

掲示板とチャットの世界から、

ブログとレンタルサーバーの時代へ。

ここ数年の間に、ネットの姿は、大きく変化しています。

この変化の中で、擬似対談はどのような意味を持っているのか、

次回に続きます。



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