本格的に戦闘が始まって、少し気が楽になった。
後一息で3話もおしまい。
入り組んだ水路の上を、速度を緩めることなく亜邦は縫うように飛んだ。
バンクするたび、翼が水面をたたき、きりもみ回転しそうになる。
交戦中の敵は三匹のみだが、爆撃部隊は街に広がっている。
うかつに上空に出て見つかれば、袋の鼠だ。
いくつかの角を曲がって、敵が見えなくなったところで、待ち伏せを仕掛けた。
脇道に侵入しながら、左足で壁を掴んで、駒のように反転する。
食いこんだ爪で巨体を支えて、敵の接近を待った。
水飛沫が近付いてきた。
阿那の潜む角との距離は、あっという間に縮んでゆき、
目の前を水飛沫が横切る一瞬を、至近弾の「椏殻」が捉えた。
黒煙に包まれた巨体が緑の水面を数回叩いて、沈むと同時に爆発する。
南国の太陽を飲み込んだ巨大な水柱は、輝きの中で霧散した。