カードが9枚入っているデッキが二つあるとします。
二つのデッキで相手に対して使うカードは、a,b,cの三種類。
Aのデッキにはa,b,cがそれぞれ三枚積み、Bのデッキには二枚積みしてあって、Bにはドロー用のカードdが3枚入っています。
A={a,a,a,b,b,b,c,c,c} B={a,a,b,b,c,c,d,d,d}
dを引くと、自動的に次のカードが引ける、という効果にしておきましょう(何ターン目に引いたかで場合分けするのが大変なので)。
さて、デッキAとデッキBの間には、一体どんな違いが生じるでしょうか・・・
・目的
ドロー用のカードを積むことの是非を問います。
一般的には「ドロー用のカードを搭載するとカードが手に入れやすくなる」と言われていますが、これは果たして本当なのでしょうか。
ドローに使うカードを一枚入れるということは、他のカードが一枚減るということです。
枚数を減らされてしまったカードは出てきにくくなるわけで、せっかくドローしても帰って出てこなくなってしまうかもしれません。
そこで、9枚のミニモデルを使って、相手に向かって使うa,b,cを一枚ずつ削ってドローを3枚投入した時、何が起こるのかを計算してみました。
枚数の減ったa,b,cが出てくる確率は、下がってしまうのでしょうか?それとも上がるのでしょうか?
・dの役割
「自動的に次のカードを引く」と書きましたが、実際にdによって何が起こるのかをご説明しなくてはいけません。
dの機能は、一言でいえば、BをB={a,a,b,b,c,c}に圧縮することです。
「次のカードを引く」という操作は、dを引いたことがなかったことになり、新しくカードを引き直すということを意味します。
dによってdをドローしてしまった場合も、自動的にもう一度引き直すわけで、そうなるとデッキ全体からdが抜け落ちる格好になるのです。
少なくとも、「dを引いたせいでほかのカードが引けなかった」ということはなさそうな気がしてきましたね。
1.各ターンにa,b,cがそろう確率
ドロー用のカードをつかうと、まんべんなくカードが出てきやすくなるというお話をしたことがありましたね。
今回は、その検証を行います。
A,Bそれぞれのデッキで、各ターンの終わりまでにa,b,cがそろう確率を算出してみましょう。
5ターン目の確率には、3ターン目、4ターン目ですでに出てきてしまっている場合を含めます。
真夜中に計算したのでだれか数値が合ってるか検討して下さると助かります。
Aのデッキでは、
1、2ターン目:二枚しか引いていないのでそろいようがない。
3ターン目:a,b,cそれぞれ3枚のうちから一枚選ぶので、3*3*3/(9C3) = 3*3*3(3*2)/9*8*7 = 9/28 = 45/140
4ターン目:二枚出ているのがa,b,cのどれかで3通り、2枚引いた1種に3枚のうちどれが含まれないかで3通り、残り二種がそれぞれ3通り。
3*3*3*3/(9C4) = 3*3*3*3(4*3*2)/9*8*7*6 = 9/14 = 18/28 = 90/140
5ターン目:ここから先は残りの部分を考えよう。
a,b,cのうち、どれか一つが残りの部分にかたまってなければOKだ。
残り4枚のうち、3枚はa,a,aかb,b,bかc,c,cなので、まず3通り。残り6枚から1枚選ぶので6通り。
1-6*3/(9C4) = 1-6*3(4*3*2)/9*8*7*6 = 1-1/7 = 6/7 = 24/28 = 120/140
6ターン目:残り3枚は全て同じ種類のカードなので、a,b,cの3通り。
1-3/(9C3) = 1-3(3*2)/9*8*7 = 1-1/28 = 27/28 = 135/140
7ターン目:残り2枚なので、必ずそろう。
1 = 140/140
Bのデッキは実質{a,a,b,b,c,c}になっているので、
1,2ターン目:二枚しか弾いていないのでそろいようがない。
3ターン目:3種それぞれで二つから一つ選ぶ。
2*2*2/(6C3) = 2*2*2(3*2)/6*5*4 = 2/5 = 56/140
4ターン目:残っているカードを考える。
二枚残っているカードが同じ種類になる。
1-1/5 = 4/5 = 112/140
5ターン目:一枚しか残っていないので必ず三種そろう。
1 = 140/140
ドローを含むBの方が、フル3枚積みのAよりより高い数値を出しました。
分子の差をとると11、22、20、5、0と、Bが100%に達するまでは差が次第に大きくなっています。
かなり単純化された実験でしたが、「ノーコストで1ドローできるカードがあったら超強い」というのは確かなようです。
2.各ターンにaを取得できている確率
Aのデッキは、
1ターン目:3/9 = 1/3 = 140/420
2ターン目:一枚も手に入れていない確率を全体から引きます。
2枚にbかcしか含まれていないので、6C2通り。
1-(6C2)/(9C2) = 1-6*5/9*8 = 1-5/12 = 7/12 = 245/420
3ターン目:3枚にbかcしか含まれていないので、6C3通り。
1-(6C3)/(9C3) = 1-6*5*4/9*8*7 = 1-5/21 = 16/21 = 320/420
4ターン目:4枚にbかcしか含まれていないので、6C4 通り。
1-(6C4)/(9C4) = 1-6*5*4*3/9*8*7*6 = 1-5/42 = 37/42 = 370/420
5ターン目:残りの部分に含まれているカードを考えます。
aが3枚とbかc1が枚なので、6通りです。
1-6/(9C4) = 1-6(4*3*2)/9*8*7*6 = 1-1/21 = 20/21 = 400/420
6ターン目:3枚全てaなので、1通り。
1-1(9C3) = 1-3*2/9*8*7 = 1-1/84 = 83/84 = 415/420
7ターン目:残り二枚なので、すでにaは出ている。
1 = 420/420
Bのデッキは、
1ターン目:2/6 = 1/3 140/420
2ターン目:aを引かない確率を求める。
2枚ともbかcなので、4C2通り。
1-(4C2)/(6C2) = 1-4*3/6*5 = 1-2/5 = 3/5 = 252/420
3ターン目:残りの部分を考える。
残っているのはa2枚とbかc1枚で、4枚から一枚選ぶので4通り。
1-4/(6C3) = 1-4(3*2)/6*5*4 = 1-1/5 = 4/5 = 336/420
4ターン目:残り2枚はともにaなので1通り。
1-1/(6C2) = 1-2/6*5 = 1-1/15 = 14/15 = 392/420
5ターン目:残りが一枚しかないので、すでにaは出ている。
1 = 420/420
こちらも全ての段階においてBの方が高い数値を出しています。
分子の差をみると7,16,22,20,5,0ですから、100%になるまでは差が次第に大きくなっています。
・注意
今回設定したdの効果は、計算を簡単にするためのやや強引なものです。
始めは「未使用のdを持っていると、次のターンのドローが2枚になる」効果で検討し、場合分けが多くなって挫折してしまいました。
そのため、実験結果もやや人工的であることをまず始めに断っておきます。
実際のドローカードは、マナコストを消費しなければ働きませんし、ドロー枚数も複数だったりします。
ですから、ドローカードより軽いカードはドローの恩恵にあずかることができなかったり、ドロー後の確率変動がdより多かったり・・・
いろいろと異なった部分が出てきます。
また、Bデッキを作るときにa,b,cから一枚ずつdに搭載枠を融通していますが、これも意図的なものです。
実際のデッキでは、カードを4枚フル搭載して、さらにドロー用カードを使って入手確率を水増しすることもあります。
しかし、今回の実験で重要なのは「ドロー用のカードを搭載すると他のカードが積めなくなる」現象です。
スロット上の問題を絡めて考えるために、a,b,cの搭載枚数が犠牲になった状況を作り出しているわけです。
・結論
他のカードa,b,cを一枚ずつドローカードdに差し替えることで、カードの取得率が全体的に上がりました。
デッキ内の他のカードを削っても、減らしたカードの取得率がむしろ高まるというのは、非常に面白い結果ですね。
少なくとも、「ドローしても、ドローを入れたら他のカードの枚数が減るから逆に出てこなくなる」ということはなさそうです。
結果に対して疑問の余地があれば、ドローカードdの効果がエナジーライトやハッスルキャッスルにあまり似ていないところでしょう。
実際のドローカードはもちろんコストを支払わなければならないので、ドローより軽いカードはサポートできません。
また、ドローで一ターンつぶれてしまうので、ドローばかりしていると身動きがとれません。
逆に、一枚のドローで複数のカードを引いてこれるので、山札の枚数を疑似的に減らす効果はdより高かったりします。
もちろん、ドローに使うカードにも様々な種類があり、それらの性能だってまちまちです。
フェアリーキャンドルのようなカードもあれば、ハッスルキャッスルも、ドルゲーザもあります。
dは、そういったカードのうちの1枚にすぎません。
今回は、ミニマムデッキにおいてdが活躍することを示せただけで良しとしましょう。
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