次回、誰も喜ばないシャビィのシャワーシーン確定(苦笑
「こんなものまで用意してくださったなんて!この服といい、顔のことといい、リシュンさんにここまでして頂いたからには、必ずお役に立ってみせます。」
シャビィは長衣を受け取り、たらいの中に浸した。生地から離れた細かいゴミが、水面に浮き上がってくる。
「どういたしまして。でも、実のところ、シャビィさんにはもう大層助けてい頂いているのですよ。」
袖で隠した口元から、軽やかな笑い声がこぼれた。シャビィには、まだ自分の立場が分かっていないらしい。
「助けるだなんて、そんな……宿と食事までお世話になっているのに、水汲みくらいですよ、私がやったのは。」
朝布をこすり合わせる手を止めて、シャビィは顔を上げた。リシュンは鎮まるどころか、一層大きな声で笑っている。
「シャビィさん、水汲みは、それは見当違いです。私が言っているのは、シャビィさんが手元から消えて、大師達はさぞかしお困りだろうということですよ。」
目に浮かんだ涙を拭きながら、リシュンはシャビィにからくりを教えた。
「シャビィさんを捉えない限り、彼らはシャビイさんの口から内職の噂が漏れるのを心配しなくてはなりません。それも、虎紳さんや煬威さんのような……」
そうか!やっとのことで事情を飲み込み、シャビィは眩しい声で叫んだ。
「捕まらないように、リシュンさんの提案を受け入れなければならなかったんだ。」
リシュンが得意げに頷くと、シャビィは再び服を洗い出した。雨ざらしにしてしまったとはいえ、もともとあまり綺麗なシロモノではなかったのだろう。たらいの中は、既に泥水と変わらない。古着屋も、人の良さそうな顔で碌でもないものを売りつけてくれる。
「師匠の口癖でしたね。人は難を逃れようとした時に、最も手痛い過ちを――」
自分で頷きながら講釈をたれかけて、リシュンは俄かに口をつぐんだ。シャビィは再び手を止め、きょとんとしてリシュンを見つめている。リシュンはシャビィのてから長衣をひったくり、大雑把に二、三度すすいだ。
「だいぶ綺麗になりましたね。シャビィさん、この服を乾かすにも時間がかかります。いかがです?ついでに沐浴なさっては。」
蔵に押し込まれたのが一昨日の夜ということは、シャビィは少なくとも二日体を洗っていない。選択の途中で取り上げられた長衣に渋い眼差しを送りながらも、シャビィはリシュンの好意に甘んじることにした。
「ええ、この際、古い垢はみな落としてしまいましょう。」
リシュンは部屋から染みのついた手ぬぐいをとってくると、シャビィに手渡した。
「中庭に降りて、柱廊をくぐったところに洗い場があります。そこで体を洗ってください。」
水くみ場に流れた水は、再び井戸に溜まってしまう。砂で濾してあるとはいえ、あまり気持ちの良い話ではない。
「分かりました。リシュンさん、ありがとうございます。」
手ぬぐいを肩にかけ、たらいの水を捨ててしまうと、シャビィはゆっくりと立ち上がり、長い階段を上りだした。
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