ふたり回し

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ハック&スラッシュにシナリオはいらない―船旅4

やっとこさ始まったハント。

待ち伏せ担当の私たちに降りかかるアクシデントとは!?


風だけが通り過ぎる廃墟の交差点で、私とワノンちゃんはじっと野良ギアを待ちかまえます。

「……なかなか来おへんな」

ワノンちゃんは、ビルの角からこっそり通りを覗いています。

フィンカちゃんが苦戦しているのでしょうか?

私たちの見えないところで、フィンカちゃんがコンクリに叩きつけられたり、

串刺しにされたり、大気圏外に弾き飛ばされて衛星軌道を彷徨っているとしたら……

ルイエちゃんが何か連絡をくれるでしょう。


しかし、このとき既に、ある悲劇がルイエちゃんに襲いかかっていました。

ワノンちゃんに引きずられてきたとき、

ルイエちゃんのスカーフから洗濯バサミを取り損なってしまったのです。

「ワノンちゃん、どうしよう……」

ワノンちゃんは、眉間にしわを寄せながら、しぶしぶ私に聞き返しました。

「なんや?」

「ルイエちゃんのスカーフに、洗濯バサミ付きっぱなしで来ちゃった……

 早く帰らないと、跡が残っちゃうかも……」

ワノンちゃんは平たい胸を膨らませて大きく息を吸い込み、

ありったけの声でどなり散らしました。


「まだ洗濯物の心配かい! 死ぬか生きるかいうときに、何考えてん!」

腰を抜かして後ずさる私に、ワノンちゃんがさらにまくしたてようとしたその時、

ワノンちゃんは肩をたたかれたことに気が付きました。

「なんや、文句あん……」

言いかけて、ワノンちゃんは言葉を失いました。

ワノンちゃんの肩にかかった半透明の触手の先には、

クラゲの足の生えた大きな風船が浮かんでいたのです。