やっとこさ始まったハント。
待ち伏せ担当の私たちに降りかかるアクシデントとは!?
風だけが通り過ぎる廃墟の交差点で、私とワノンちゃんはじっと野良ギアを待ちかまえます。
「……なかなか来おへんな」
ワノンちゃんは、ビルの角からこっそり通りを覗いています。
フィンカちゃんが苦戦しているのでしょうか?
私たちの見えないところで、フィンカちゃんがコンクリに叩きつけられたり、
串刺しにされたり、大気圏外に弾き飛ばされて衛星軌道を彷徨っているとしたら……
ルイエちゃんが何か連絡をくれるでしょう。
しかし、このとき既に、ある悲劇がルイエちゃんに襲いかかっていました。
ワノンちゃんに引きずられてきたとき、
ルイエちゃんのスカーフから洗濯バサミを取り損なってしまったのです。
「ワノンちゃん、どうしよう……」
ワノンちゃんは、眉間にしわを寄せながら、しぶしぶ私に聞き返しました。
「なんや?」
「ルイエちゃんのスカーフに、洗濯バサミ付きっぱなしで来ちゃった……
早く帰らないと、跡が残っちゃうかも……」
ワノンちゃんは平たい胸を膨らませて大きく息を吸い込み、
ありったけの声でどなり散らしました。
「まだ洗濯物の心配かい! 死ぬか生きるかいうときに、何考えてん!」
腰を抜かして後ずさる私に、ワノンちゃんがさらにまくしたてようとしたその時、
ワノンちゃんは肩をたたかれたことに気が付きました。
「なんや、文句あん……」
言いかけて、ワノンちゃんは言葉を失いました。
ワノンちゃんの肩にかかった半透明の触手の先には、
クラゲの足の生えた大きな風船が浮かんでいたのです。