ふたり回し

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水蛇の塔(訳者前書き)

この物語は其れっぽい雰囲気を出すためのニセ文です。

実在する人物、組織、土地、出来事などとは一切関係がありません。


 此の文章は1908年、ルブランシュ大学の学会誌「考古学季報("La revue annuelle de l'archeologie", vol.56)」に掲載された至極短い発掘記を日本語に翻訳したもので在る。彼の発掘記は学者のものとは思えぬやうな非科学的な代物であり、掲載を赦許した大学と考古学科は轟々たる非難に晒されたものゝ、焚書を免れ今もフランス各地の大学図書館の奥地で埃を被つてゐる。

 處が、そのまゝ埃を被せてゐれば世の平穏も守られたものを、態々埃を掃って訳者の下に持つて来た筋金入りの物好きがゐた。地方国立大に勤める訳者の友人である。留学中に彼の学会誌を見出した彼は此れを大層面白がり、どうにかして日本に広めてやらうと、かう考えたのだ。

 其の内容は訳者に取りても俄かには信じ難い物であつたが、己の職分に従ひ、原文に忠実な翻訳を心掛けた。