前回、「っ」が古い文献にに登場しないという事を確認した。
このことからわかるのは、
「っ」が原理的には存在していなかったということだ。
前回の記事・http://d.hatena.ne.jp/Shiroenpitu/20080731/1217492036
さて、ここで現代のサンプルにあたってみよう。
「そっくり」「はっぷ」「きって」「にっき」
「そっくり」は不明だが、後の三つには共通点がある。
「はつふ」「きりて」「にちき」どうだろう。
この発音しにくさ。
言いやすくするために、つぶれた音が生まれ、
それが「っ」になったのではないか。
日常生活でも、「行って、買って」というように、
連用形は音便を使うことの方が多い。
古典が描かれた当時にも、
「まいりて」ではなく、「まいって」と言っていたのかもしれない。
宙に浮いてしまった「そっくり」だが、こちらは仲間がたくさんいる。
「こそこそ」→「こっそり」のように、
擬態語から副詞を作る時は、頭を取って「っ」を挟む。
書き言葉は形に残るが、話し言葉はその身を隠してしまう。
「っ」の痕跡を辿ることは、非常に難しい。
今私たちが話していることばにも、謎が潜んでいるのだ。