やっと戦闘シーンに入れそう。
「万事につけて隙のない男だったからな。
あいつに自慢できるのが嬉しかったんだろう。
大してうまくもないのに、事あるごとに飲んでた気がするよ。
でも、傑作だったのは、初めて飲んだ時の感想だったな」
気が気ではなかったので、言われた時には気付かなかったが、
風音の頭の中では、大体の構図が出来上がっていた。
「・・・一気飲みしたんですね」
「そうだ。ついでに、一言目も予想がつくか?」
兄の顔を思い出してみるが、見当がつけられないまま、
風音は自分の感想を述べてみた。
「・・・甘いものだと、思った・・・とか」
「それだ、それ」
宿合は腹を抱えて、今度は遠慮なく声に出して笑った。
決まり悪そうに黙りこくった風音に、千波が声をかける。
「不思議なこともあるものですね。
不知火さんがいらしたのも偶然なら、宿合さんとお兄様が巡り合ったのも偶然ですし――」
「一気飲みしたのは、遺伝だな」
宿合は笑ってから、
「妙に懐かしいな、昨日のことのような気もするし」
と付け加えた。後追うことばかりではない、他のところで、一につながっている――
潮風が広場を吹き抜け、鮮明な空気が、全身に染みわたる。
縮んだ胃袋をいたわりながら、風音も空を仰いだ。
さあ、後は戦ってくれ。