ふたり回し

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一枚考ならぬ一枚語り―悪魔の契約

ワンショットのコンボから、特殊なエンジンの作動キーまで、さまざまな役割をこなす悪魔の契約。

おおよそトーナメントシーンで好まれそうにはないカードですが、このカードの魅力には語りつくせないものがあります。


・名前通りの割に合わない取引

「悪魔の契約」といえば、一番最初に思いつくのは「ファウスト」。

彼は「若返らせてやるから手下になれ」なんて、なかなか魅力的なことを言ってくれますが、「悪魔の契約」はそんなに親切ではありません。

「マナを墓地に置いた分だけドローできる」という、文字通り右にあるものを左に移すだけのカードです。

カードゲームっぽく表現するなら、「n+1対n交換」ですね。

似たようなカードでもトラップコミューンなんかは比較的喜んで使う人がいますが、「手札を減らしてでもマナを増やしたい」のがDM。

「悪魔の契約」は、いかにも危険な、しかし、あまり得る物のないとてもしょっぱい取引なのです。


・「悪魔の契約」との付き合い

先にも述べたとおり、悪魔の契約は割に合わないカードです。

犠牲を擁するカードの常で、デメリットをメリットに、要するに、カードを墓地に送る動作を有効利用できるデッキにしか入りません。

そのために、私がこのカードを初めて採用したのも、かなり遅かったように思われます。

おそらく、ブログを立ち上げた少し後、「石切り」に搭載したのが最初でしょう。

この時はパロロを使って墓地に送ったカードを手札に流しこんで使いましたが、マナが減ることには変わらず、限定的な使い方にとどまりました。


悪魔の契約が面白いと思えるようになったのは、だから、もっと後のことです。

転機になったのが、神化編だ、と申し上げれば、勘の良い方には察しが付くでしょう。

ダイヤモンドクラックとのコンボが、私の持っていた悪魔の契約のイメージを変えました。


神化編のカードがあまり好きでなかったためにデッキのネタに悩んでいた私は、半ば仕方なくクラックに手を出しました。

実は、私は一度クラックを諦めていました。

初めて見たときにクラックから受けた印象は、「パロロやコスモビューと同じような一発屋」。

自由に動けるようなデッキはとても組めないだろうから、クラックでデッキを組む気も起らなかったのです。

おまけに契約とクラックを組み合わせたデッキはすでにいくつかVaultに載っていて、私はやけを起こし、

「だったら思いっきり殺伐としたデッキにしてやる!」

と開き直りました。

それが、「SHEEPS」ができたきっかけです。


・気難しいカードの魅力

詳細はデッキの説明を読んでいただくとして、その結果は一言でいえば大成功でした。

そしてその時感じたのが、やはり気難しいカードは上手く使えると楽しいということです。

普通に使うだけでは利益の出ないカードには、工夫してデッキに組み込む楽しみがあります。

他のカードの動きを鑑みて、スムーズにつながり、かつ各要素がうまく役に立つように調整しなくてはいけません。

ここまでは、前回の一枚語りで扱った鬼面城と同じです。


そして、悪魔の契約が特別なのは、そこに加えてプレイングの中での特別な裁量を要求する要素があるからです。

悪魔の契約でマナから墓地に置くカードはプレイヤーが自由に選ぶことができます。

そのために気前がよいというか、他のカードではできない非常にダイナミックな動きを楽しめますが、これがもろ刃の剣。

上手く考えてマナと手札のバランスを取らなければ、メフィストの張った綱から真っ逆さま、地獄への直行便です。

このデリケートさ加減が、私のツボにはまりました。

高度な判断を要求するカードは、プレイングを難しくしてしまいますが、同時にデュエルをスリリングにもしてくれるのです。



そんなこんなで、私はまだ悪魔の契約から逃れられそうにありません。

これからもまた、マニアックなカードを選び、ピーキーなデッキを作っていくでしょう。

カードに限らず、デッキについてもいえることですが、自由な裁量を許すものにはリスクが付きまといます。

隅々までとどくように、長く、そして様々な方向に引き延ばされた足場は、引き換えに太さを失ってしまうのです。

メフィストは見返りなしに何かを私たちに与えたりはしません。

私たちが張り詰めた綱の上で道化を演じ始めるのを、彼はじっと待っているのです。


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