これまでは、カードの搭載枠に関する基本原則を扱ってきました。
今回は、その原則に抗ってカードの搭載枠を自ら変化させるテクニックについてご説明します。
・ドローとスペース
カードゲーム業界では、デッキ中のカードの搭載枠を「スロット」「スペース」などと呼びます。
今日のお話の軸になるのがこの言葉。
いちいち搭載枠と書くのも大変なので、こちらの表記を使わせてください。
先日、「ドローが積み重なるとカードを引き当てやすくなる」とご説明いたしました。
おもに後半に使うカードはターンが経過した分引き当てやすいという趣旨での説明でしたが、もちろん強引にドローしてもOK。
大量にドローしたり、山札からカードを選ぶ(サーチ)カードを使ってカードの入手率を上げるのは常套手段です。
すでにご紹介した青Bロマが、まさにその典型です。
そして、これもお話したことですが、「同じカードをたくさん積めば引き当てやすくなる」という原則もあります。
「強引にドロー」して、なおかつ「たくさん積」めば、より高確率でカードを手に入れることができるわけです。
・・・が、こう考えることもできます。
「しっかりドローすれば、同じカードを搭載する枚数は減らしてよい」
「たくさん積むことで、ドローをせずに済ませることができる」
もちろんデッキがスムーズに動くようにしなくてはいけませんが、十分余裕があるなら、その余裕を他に回しましょう。
空いたスペースに違う役割のカードを入れることで、デッキの柔軟性は格段に向上します。
・カードの大きさとスペース
スペースを拡張する方法は、ドローだけではありません。
他のカードのバックアップを受けずとも、スペースを空けることは可能です。
方法は至って簡単。
一枚で二枚分の働きをするカードを使えばよいのです。
一枚で二枚分というと二種類の能力を持ったカードを連想されるかもしれませんが、この場合はそうではありません。
同じ効果でも、効果が及ぶ範囲はカードによって様々。
「大は小を兼ねる」というように、大きなカードの中には複数のアクションを行うカードも存在します。
例えば、ハヤブサマルとドラヴィタを比べてみてください。
ドラヴィタが一匹いれば、ハヤブサマル四匹よりもたくさんの相手をブロックすることができますね。
ものすごく乱暴な考え方ですが、ハヤブサマル四匹をドラヴィタホール一枚に交換すると、残りの3枚を好きなことに使えるようになります。
しかし、実際にそんなことをする人はなかなか見かけません。
1枚しか入っていないカードはなかなか出てきませんし、コストが高ければそれだけ使えるようになるまで時間がかかるからです。
特に現在のような1ターンの遅れが致命傷になりうる環境下では、高コスト化はリスクの高い戦術。
それを承知で高コスト化によってスペースを空けるにしても、ドローやマナ加速でしっかり補助してあげる必要があります。
・スペースの拡張による濃縮と多角化
さて、スペースを空ける方法が分かったところで、空いたスペースの使い方に目を向けてみましょう。
空いたスペースをどうやって使うかによって、デッキの性格はがらりと変わってしまいます。
効果的にカードを使い、またよくまとまったデッキを作るためにも、スペースの運用はしっかり意識するようにしましょう。
ここで、前回まで使ってきたスロット表を使いましょう。
次に、ドローを利用して1アクションに必要なスペースを減らします。
すると、カード4枚分の空きスペース(灰色)が生まれますね。
この空きスペースにそれまでと違うカードを搭載すると、デッキはいろいろな事態に対応できるようになり、柔軟になります。
同じカードをさらに2枚ずつ搭載すると、同じアクションを何度も重ねて使えるようになり、勢いがつきます。
この二つの選択のうち、分かりやすいのは多角化の方です。
しっかりドローを行い、また燃費の良いカードを使ってスペースを空け、その分様々なカードを投入する。
すると、相手のデッキや試合展開に合わせて効きやすいカードを選び、より簡単に勝てるようになる。
当然他の部分にしわ寄せが及びますが、メリットだけを述べるならこれで十分だと思います。
それに対して、扱いが難しいのは均質化です。
デッキの部位によって、たくさん枠を割いてもカードが余るばかりで役に立たないことがあるからです。
敵がいない時のブロッカーや除去呪文、後半戦のマナ加速、手札が余っているときのドロー・・・
大量積載が効果を発揮する部位を、しっかりと見極める必要があります。
それでは、均質化が効果を発揮するのは一体どのような場合でしょうか。
まず思いつくのは攻撃要員です。
たくさんいるということは、それだけたくさん攻撃できるということ。
手数が多ければ、早く相手を倒せるのはもちろん相手の妨害を踏み越えるのも容易になります。
また、コントロールデッキのランデスやハンデスも大量積載しやすいカードです。
相手が手札もマナも持っていないということは稀ですから、手札破壊やマナ破壊は積極的に使っても大丈夫。
特に、マナ破壊は効果が累積する分連打が効果的です。
ただし、大量に同じようなカードを使う場合には、上手くカードをはけることが大切です。
コストを減らしたり、マナを増やしたり、コストを使わずに出せるカードを使ったり・・・
手札とマナのバランスが悪ければ、カードを最大限に使用することはできません。
手札がはけないようならば、逆にコスト面をサポートする方が結果的に多くのカードを連投できるでしょう。
これで、デッキの構造シリーズも残すところあと一回。
あとはシナジーの構造についてまとめるだけです。
できることなら、週末の間にまとめて身軽になりたいところですね・・・
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