本当はこちらを先に持ってくるべきでした。
シナジーという曖昧な言葉を、出力と入力という二つの切り口から考えてみましょう。
・シナジーとは何か
通ぶってシナジーという言葉を使いたがる人はたくさんいますが、実のところシナジーについて詳しく説明できる人はあまりいないように思われます。
「相乗効果」「相性がいい」「強い組み合わせ」「コンボみたいな」「サポートしあう」・・・
実に様々な言い換え方をされるこのシナジーという言葉は、本当は何を示しているのでしょうか?
「相乗効果」や「相性」や「組み合わせ」や「コンボ」の正体とは、一体何でしょうか?
その答えを探るためには、一枚のカードをモノではなく、手続きとしてとらえる必要があります。
この場合の「手続き」とは、「~~ならば、~~する」という命令のこと。
カードは特定の条件を満たしたとき、固有の効果を発揮します。
この条件を、「入力」そして、効果を「出力」に置き換えてみましょう。
3マナを払って「エナジーライト」を唱えれば、手札が2枚ドローできる。
最も単純なカードの形です。
しかし、カードが持っている効果は、普通に使って発揮されるモノだけではありません。
直接意味のある効果でなくとも、特殊なカードの「手札とマナ以外の条件」を満たすことができるなら、それは立派な出力です。
デ・バウラとキャッチャーを例にとって、そうしたカードについて考えてみましょう。
普通デ・バウラは呪文を墓地から手札に戻し、またブロッカーとしてバトルゾーンを押さえるのが仕事です。
それでは「呪文回収」と「ブロック」がデ・バウラの機能の全てかというと、そんなことはありません。
例えば、「バウラキャッチャー」と呼ばれるほどに定着したソウルキャッチャーとデ・バウラの組み合わせは、このような図式を描きます。
デ・バウラは「ナイト」であり「メカオー」であり、「光」の「ブロッカー(属性としての)」でもあります。
それは、「ナイトマジックを有効にし」「メチャゴロンのスリリングスリーに引っかかり」「ハイドロの足しになり」「グネスに進化できる」ということ。
これらの「出力」は、私たちが望むと望むまいと、常に「垂れ流し」続けられています。
こうして垂れ流された「出力」を「入力」として要求する強力なカードに伝えてあげることで、より効率よくカードの機能を引き出すこと―
それが、「シナジー」という言葉の真意です。
・出入力の種類
シナジーを考える上で、出力と入力をいくつかのタイプにわけておきましょう。
そうすることで、問題の本質が見えやすくなります。
まずは出力。
これはすぐに役に立つ出力(赤色)と、間接的にしか役に立たないもの(黒)に分けます。
それから入力。
こちらは効果の発動に必要か、必要に近い(青)と、あったらプラスアルファで使いやすくなる(黒)にわけます。
要するに、「実際の機能」が赤で「デッキからの入力」が青、それ以外が黒ということですが、進化元などは特別扱いで青にするわけです。
・シナジーの良くない形
ここからがデッキの作り方です。
デッキの中に入っているカードの間で、出力と入力がどのようにやりとりされている状態が理想的かを考えてみましょう。
・・・といいつつ、良くないパターンを挙げるところから入ります。
良くないパターンは、図式化しても、そして使ってみても、とても容易に問題が見えるからです。
この場合ポイントになるのは、出力する側のカードと入力される側のカードのバランス。
これが極端になると、デッキの動きはたちどころに滞ってしまいます。
一つ目は、一枚のカードのためにたくさんのカードをつぎ込んでしまうパターンです。
それも、出力する側のカードが直接的な機能を持っていない場合、コッコルピアのような「狭い」効果をもつカードの場合が深刻です。
コッコルピアとトットピピッチとダークルピアでNEXを強化して・・・
他のアクションを犠牲にしてカード一枚分の機能が得られただけでは、十分な見返りとはいえません。
コッコルピアを使うなら、ドラゴンもたくさん投入してコッコルピアの機能効率を底上げするべきです。
逆に、多くのカードが一枚のカードを必要としている状況もいびつです。
ルピアが出てくることを前提に重いドラゴンばかりを投入するような場合ですね。
出力する側のカードがアクシデントによって使えなくなっただけで、何枚ものカードが機能不全に陥ってしまいます。
出力する側の効率が上がるということは、それだけ出力ミスのリスクが大きくなるということ。
シナジーの構造は、慎重になりすぎても、欲張りすぎてもうまくいきません。
シナジーに振り回されず、シナジーを活かしてデッキを作るためには、何よりもバランス感覚が大切です。
・シナジーから安定したリターンを得る方法
今回のメインディッシュ、より効率よく、そして手堅くシナジーを発揮させる方法についてご説明します。
先ほどの良くない例から逆算して、どうすれば問題を解決できるか考えてみましょう。
まず第一に、「直接的な出力のないカード」と「必要な入力が多いカード」を使わないという方法があります。
解決になっていない解決策にも見えますが、これはある意味でもっとも単純で効果的な解決策です。
相方のカードが来なくても無難に仕事ができるカードを増やせば、デッキの動きが安定するのは当たり前。
無理をせずにオプション程度の気持ちでシナジーを発生させるだけでも、十分な見返りが期待できるでしょう。
そして、シナジーのもつ爆発力を保つ、すなわちリスキーなパーツを残せる解決策もあります。
カードが出て来ないときがあるのは、同じカードがデッキに4枚しか投入できないためです。
もし8枚ずつカードが投入できるなら、カードが出てこないのではないかと心配する必要はありません。
もちろん、同じカードを8枚投入することはできません。
実際は似たようなカードを使ったり、サーチ系のカードを使ってコンボパーツを拡張します。
例えばBロマは「墓地にカードを増やす」→「墓地のカードを利用する」という二つの軸に、何種類ものカードを乗せています。
デッキを二つの層にまとめることで、全体で一貫したシナジーの流れを維持しているのです。
また、出入力の流れを相互に巡らせるのもよくつかわれる手です。
こちらは、もっぱら爆発力を増強する上で役に立ちます。
バキュームクロウラーやアラゴトムスビでジェニーを手札に戻す時のことを考えてみてください。
ジェニーのおかげでバキュームはバトルゾーンに残り、ムスビはマナを増やすことができます。
そして、同時にジェニーの再利用まで可能になります。
一方のカードが他方のカードに役立てられる際に前者の入力が賄われるような組み合わせは、一石二鳥の例えに違わず大きな利益をもたらします。
一方向のみならず双方向にシナジーを張ることによって、カードはより効率よく動き出します。
ムスビのように、「カードのペナルティ効果が逆に有利に働く」組み合わせはいろいろあるので、カードを眺めながら探してみましょう。
後は「デッキががつために必要な出力」と「デッキ全体が供給する入力」についてお話すれば、このシリーズも完成です。
最も根本的なことを押さえるためのシリーズとして書き出した、「デッキの構造リターンズ」。
当初思い描いていたよりもはるかに肥大化してしまいましたが、それだけ内容は豊かになりました。
これを押さえるだけでも、デッキ作りの見通しがかなりすっきりするはずです。
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