ふたり回し

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開発部XXの真の目的について

信用のおける筋から入手した情報です。

できれば開発部の手が回る前にスクリーンショットを取っていただけますようお願い申し上げます。

私自身が危険な状態なので、新しくリーク記事を書くことはおそらくできません。


先日の開発部で、覚醒した八重子が豹変して驚いた方も少なくないものと思われます。

八重子の覚醒は、他の部員の覚醒とはどこか違う。

会話の内容からすると、A2君とアンちゃんはすでにそのことを知っていたはずです。

そして、二人は八重子の覚醒を恐れていた。


なぜ八重子の覚醒は他の部員の覚醒と異なっているのか?

そして、なぜ八重子の覚醒を防ぐ措置が取られていたのか?

突然のアクシデントに、混乱するのは当たり前のころ。

しかし、私は数か月前からこの事態を予想していました。

大学の先生が友人から聞きだしたという開発部の秘密を、知らされていたから。

デッキ開発部XXについて、私の知りえた全ての情報をここに書き遺しておきます。

それが、私に課せられた最後の責務だと思うから。


現時点での情報まとめ


表向きデッキ製作のための組織として運営されているデッキ開発部。

その実体は覚醒デュエリストを管理・および覚醒感染の症例を取るための研究機関です。

覚醒デュエリスト八重子を利用してすべての人類が備えている超次元因子を発現させること。

それがデッキ開発部XXの真の目的だったのです。


発端は70年代、フロリダの大学で発見されたある遺伝子でした。

アメリカの遺伝学者、K・Y=マクドゥリスがギャンブラーの強運をつかさどるX染色体上の特殊な遺伝子の存在を発見、

これを超次元因子と名付けました。

マクドゥリスは超次元因子が新たな種族への進化の兆しであるという「サイキック理論」を提唱します。

しかし、形質の発言には超次元遺伝子の情報を解凍するタンパク質「サイキック」が必要であることが発覚。

サイキックを生成させる形質を、博士は「覚醒因子」と名付けます。

この遺伝子はなかなか発見されず、「覚醒因子」という言葉は長年宙づりのままでした。

7年にわたる研究の末、マクドゥリスはX染色体上に覚醒因子を発見しましたが、この発見はマクドゥリスを絶望させるものでした。

覚醒因子を持つ被験者は少数の例外を除けばコリアンや日本人のみ。

覚醒因子がウラル・アルタイ語族に特有の形質であるという仮説を、マクドゥリス本人は否定することも、認めることもできなかった。

先鋭なレイシストだったマクドゥリスにとって、この事実はそれだけ屈辱的なものだったのです。

白人の優勢を覆す覚醒因子の発見が、公にされてははならない。

マクドゥリスは研究を中止し、一切の資料がに葬られました。


そしてその15年後、ある日本人留学生が破棄されたはずの資料の一部を発見し、本国に持ち帰ります。

留学生の名は八木敦。彼が掘り起こしたパンドラの箱は、やがて人類を脅かすことになります。

失われた15年間は、マクドゥリスが捨て去った企てに新たな矛を与えました。

覚醒因子を組み込むためのウイルスによる64億総覚醒計画―野心家の八木にとって、人類の進化はもはや妄想ではありませんでした。

八木は順調にキャリアを重ね、その背後で計画に向けた根回しに奔走します。

そして、ある製薬会社をスポンサーに(製薬会社の名前は伏せます)計画は始動、

奈良先大で開発された覚醒ウイルス「SP-42黒アゲハ」は予防注射と偽り、各地の大学病院で投与されました。

この際に被験者を追跡、監視するために結成されたチームが今の開発部の基盤です。

しかし、計画が順調に進んだのはここまで。

覚醒因子を組み込むだけではなかなか安定した覚醒は記録されず、ギャンブラーの強運の域を出る被験者は現れません。


プロジェクトXXの鍵を握る「覚醒感染」に関する報告は、このころすでに提出されています。

被験者の名はA-0234、赤城雄大。Aシリーズのオリジナルとなった人物です。

覚醒デュエリストが周囲の人間の超次元因子を発現させるこの現象は「覚醒伝播」と名づけられました。

ただ、被験者自身も伝播によって覚醒した人間も強い反応は見せなかったため、当初この現象はあまり重要視されなかったようです。


そして3年にわたる実験の結果、八木博士はX染色体上の二つの因子が不完全優性であり、

四つ揃わなければマクドゥリス博士が予見していたような革命的な力は生まれないという結論に至ります。

デュエリストの多くを占める男性を覚醒させることが困難であるため、事実上計画はとん挫。

本社がこの時期に研究所の経費を大幅に削減したという記録が残っています。


その後、覚醒因子の研究は迷走、遺伝子に頼らない覚醒者の増殖法が模索され、

「覚醒伝播」もその一つとして再び脚を浴びました。

それでも、計画の指針は二転三転し、資金難も相まって研究が再開されるまで実に8年の歳月が流れています。

状況の好転は、たった一人の被験者の登場を待たねばなりませんでした。

先天的に二つの覚醒因子を持った少女、被験者N-088、「天宮八重子」

八木博士がN-088を検査した結果、彼女が群を抜いた潜在能力を持つことが判明します。

小規模な「覚醒伝播」ではなく、大規模な「覚醒感染」の持つ可能性―

博士は「覚醒感染」による計画の再始動を試みますが、本社にとってプロジェクトは過去の遺物。

思うように資金が獲得できず、計画続行が危ぶまれました。


N-088が新たなる人類のイヴたる存在であることを確信していた博士は、この時期に人類覚醒感染計画「プロジェクトXX」を起草。

デッキ開発部XXの「XX」が意味しているのは、八重子の持つ特別な性染色体に他なりません。

彼女の覚醒条件は「デュエルのおもしろさに気づく」という簡単なものでしたが、

あまりに強力な八重子をすぐに覚醒させることは危険だと判断され、4つの暗示によって彼女の覚醒は封印されたといいます。


その後、博士はダミー機関であるデッキ開発部を設立。

デッキの研究、紹介を名目に、本社から研究資金を提供させることに成功しています。

大学時代の友人でありトッププレイヤーでもあった皮裂大輔にNー088を預け、

通常業務と並行して何人かの有力な被験者の観察、データの採取を開始させます。

計画の核となるN-088、実験中に喪失したA-0234の代わりにクローンの中で最も優秀なA-6984赤城亮、

N-088と同じく覚醒因子を二つ持つ人工覚醒デュエリストA-7342森口杏、A-7268野巴に、

被・感染者としての役割を持ったI-0598黒木修平。

初期開発部メンバーは、明確な目的のもとに召集されました。

何度かの検査の結果、A-7268及びI-0598は不適格と判断され、代わりにI-1435黒木健二、I-1436黒木友哉を召集。

A-7342とA-6984を利用した兄弟への感染実験が行われ、プロジェクトXXはついに最終段階に突入します。


実験の結果、A-7342、A-6984に続き、覚醒条件が緩かった兄弟は無事に覚醒。

N-088覚醒の目途が立つものと博士は期待しました。

けれども、覚醒がもたらす人格への影響と強運は、以前との実験に見られたものとは明らかにかけ離れていた。

この結果は、N-088はすでに半覚醒状態にあり、他の4名に影響を与えていた可能性、

暗示によって与えられた制限によってかろうじて制御されているにすぎない可能性を示唆しています。

先天的に二つのX染色体に覚醒因子を持つN-088による人類覚醒感染計画「プロジェクトXX」はいったん中止され、

最大出力の覚醒を制御する方法の判明を待つはずでした・・・

 

先日、内部の協力者からN-088が覚醒したとの報を受けました。

開発本部との連絡は途絶し、翌朝静岡にある第二研究所からチームが派遣されたとのことです。

それ以後の詳細はいまだ不明ですが、予断を許さぬ状況であることは疑いえません。

今までの実験で判明している最も効果の高い対策は、鼻にゆでたアスパラガスを詰めること。

アスパラガスの枯渇を防ぐため、最小限のアスパラガスを近隣の人と分け合うよう心がけてください。


これはおそらく私からの最後のメッセージになるでしょう。

もし皆様に無事をご報告できたとしても、別の場所になると思われます。

首都圏にお住まいの皆様は、くれぐれもお気を付け下さい。

今までふたり回しを御贔屓にしていただき、誠にありがとうございました。

みなさんのご無事を祈って。

                                           4月10日 thiary、白えんぴつ