いっそここまで歪みまくると清々しくらいだなCタケ!
個性のある人間なんて、ホントは全然いないんじゃないのか?
どいつもこいつも周りから浮くのを恐れてくだらないお喋りばかりに時間を費やし、自分の考えなんて持ってないから、口を開けば「分かる分かる」「だよねだよね」の繰り返し。
興味がある事と言えば食い物と金とファッション、好いた惚れたにウザいと来てる。
それも自分で料理をしたり、コーディネートを考えはせず、どこかで誰かの客になるだけ。
そんなヤツ、夜が明けた時エンドウ人間と代わっていたって、誰も気づきはしないだろう。
ボードリヤール風の言い回しをするなら、文字通りの交換可能というやつだ。
例えば、向かいのクレープ屋の前でだべっているDQN共。
似合ってもいないのに頭を黄色や茶色に染め、いこの暑いのに学ランの下にパーカーを着こんだり、セーラー服の上から黄ばんだカーディガンを羽織ったり。
はみ出し者を決め込んだってテンプレな気崩ししかできない、ありふれた落ちこぼれだ。
特にあのミニスカートでガードレールに足を乗せた糞ビッチ。
ああいうロクデナシはファッションかダイエットでシャブにハマり、惨めったらしく金をむしられ、最後には無免許で車を乗り回して可憐な幼女を跳ね飛ばしたりするに違いない。
連中と違ってまともな世界に生まれてきたことだけは、俺も両親に感謝している。
そんなことを考えているうちに信号が変わり、俺は横断歩道の上を歩き出した。
DQN共との間が詰まり、話声が聞こえてくる。
なぜか俺を睨み付け、肩を寄せて何やら囁き合っているが、こんなゴミのような人間たちのひがみに付き合っている暇はない。
気づいていないふりをして、素通りすることにした。
「なー、あのキノコ頭、さっきからめっさこっち見てるんやけど」
「ホンマ? マジキモくね?」
「なんか目つきやらしくない? ってか、蛍、あんたパンツ見えてるんじゃ――」
「ハァ? なん、それ、最っ低……ないわぁ。ガチで死んでくれんかな?」
「キモ過ぎっつーか、ひょっとしてアレちゃう? オタクさん」
「えー? それ、この間宝塚で小学生誘拐したんと同じ?」
「ヤバ。容疑者じゃん。写真撮って皆に知らせよ」
「ウソ……ガチで汚されたんですけど……ウチもう生きていかれへん……」
「道理で童貞臭ーと……なあ、あいつやっぱ、部屋にポスターとか貼ったりしてんのかな」
「ヨシ、お前ちょっと聞いてこいや。って、うわ、今こっち見たでアイツ!」
ハエ共が何やら喚いているが、所詮は雑音だ。許してやれないこともない。
連中は分かっていないだけなのだ、自分の前にいるのが一体どれほどの人物なのか。
シンナーのせいで脳味噌が縮んでしまった憐れなDQN共に、俺程の人物を理解できるだけの知性を求める方が酷というものだ。
見た目こそ平凡な高校生だが、俺をその辺の一般人ーと一緒にされては困る。
何を隠そう、この俺は兵庫、いや関西で唯一と言ってもいい、真の理論派デッキビルダーなのだから。