ふたり回し

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赤ネクラの真意

Q.分かりにくくする以外の意味があるのか?

A.それが最大の目的です。


・赤ネクラの真意

時代遅れのMTG用語をありがたがるDMプレイヤーは、MTGプレイヤーにとっては「黄色い猿」。

揶揄の対象にはなっても、決して優雅には見えないでしょう。

これは、文明開化当時の外来語の氾濫と、似ているところがあるかもしれません。

慣れない西洋語の真似をして、わざわざ会話を分かりにくくしていたのは、確かに滑稽です。


永井荷風などは強烈に皮肉っていましたが、起こったからには何か理由があるに違いありません。

では、一体なぜ格別スタイリッシュでもない用語が伝播するのでしょうか。


ここで、「MTGへのコンプレックス」とか「西洋文明の憧れ」を持ち出すのは、浅はかな精神論です。

それだと、若者のスラング、例えば「KY」とか「イカす」とか「キモイ」の説明ができません。

わざわざ言いかえているといいう点ではいずれも同じ現象であり、使われ方も似ています。

仲間内でしか通用しないやり取りを生み出すための、装置。

それこそが、こうした言葉の持っている最大の機能なのです。


・コミュニティの拡散と集束

「仲間内」という言葉は、赤ネクラの真意です。

言葉、というより、風習には、コミュニティの範囲を制限する機能があります。

どうせ交流するなら、より多くの人と・・・と考えてしまいがちですが、それならこのネットを見てください。

より多くの人と、建設的な交流をしたいのなら、掲示板で意見交換するほうがツイッターよりも便利です。

にもかかわらず、ツイッターが好まれる、いえ、「今起きた。眠いなう」と近況報告したがる理由―

あるいは、VAULTの掲示板ではなく、ブログのコメント欄での意見交換が好まれる理由―

さらには、MIXIが成功した理由さえも、一言に集約することができます。


「『今起きた。眠いなう』が通用する範囲」

これが、「仲間内」が持っている最大の武器です。

こんなことを掲示板で言っても、誰も見向きもしないことでしょう。

コミュニティが広がるほどに、その交流の内容は一対多のコミュニケーションに近づきます。

コミュニティが狭まるほどに、その交流の内容は一対一のコミュニケーションに近づきます。

だから、人は「朝飯が豚まんだった」と返してもらうために、コミュニティを制限しようとします。


すなわち、

「素人にはわからないカードゲーム用語を共有するゲーマーの」コミュニティ、

「高度な文明で用いられる言葉を学習した人間の」コミュニティ、

「オジザンには分からない言葉を知っている若者の」コミュニティ、

あるいは、「若者には分からない言葉を知っている年代の」コミュニティ・・・

こうしたコミュニティに参加するため、いえ、形成するためにも、こうしたスラングが用いられます。


老若男女、世界各国、各社会階級の人が集まって、一体何が話せるでしょうか。

ネットは、すでにそれを可能にしています。

そして、それは実行されなかったのです。

オタクはオタク同士で集まり、主婦は主婦同士で集まり、インテリはインテリ同士で集まります。

真に開放的なコミュニティには、さしたる魅力がないのです。


現に、白い目で見られようと、後ろ指を指されようと、コミュニティを優先させるという人もいます。

新興宗教や暴走族がなくならないのも、団員間のコミュニケーションの魅力があるためでしょう。


・再集束の動き

現在のネットDM界が次第にオフ重視になってきているのも同じことです。

昔のように、掲示板やVAULTに参加しているだけで交流が持てる時代は、終わってしまいました。

かつては、ネット上の集まりに参加しているだけでも特異なことでしたが、今はそうではありません。

vaultは人であふれかえり、個人的な交流が可能な規模を超えてしまいました。

そこでコミュニティの範囲を制限するために、疑似的な地縁集団を形成する必要があったのです。

クールオフにとどまらず、ファイトクラブおやつのじかんなども地縁集団に数えるべきでしょう。

北陸にも、独特な地縁集団があるようです。

クールオフに500人が集まったら、ファイトクラブに300人が参加したら、おやつが聖地になったら・・・

やっぱり、内部に新しいセクトが生まれるのではないでしょうか。



今回の「赤ネクラ」や、昨年の「トースト」も、そうした動きの一部と捉えるべきでしょう。

「仲間」を篩いにかけるための言葉、それが、赤ネクラの正体です。

そしてそれは、「純度の高い」仲間を作り出すためのツールでもあります。

ちなみに、私はもう少し開放的なコミュニティを望むのですが、皆さんはいかがですか?


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