英BAEシステムズと仏ネクスターは40CTCの販路拡大に巨額を投じたものの、既存の40mm機関砲と弾薬を共有できないことを問題視する軍が圧倒的な多数派であった。
目玉であるはずの40mmテレスコープ弾が最大の壁として立ち塞がり、世代交代は疎か初期投資の回収すら見込めない。
苦境に立たされたネクスターはリスクを冒して40mmテレスコープ弾に対応した火器の多角化を図り、その一環として参加のPGMが提案したのが40CTSRである。
40mmの徹甲弾は歩兵砲相当の規格であり、狙撃銃にとっては威力、反動ともに過大である。
PGMは反動の軽減と携行性の確保を最重要視し、クロアチアのTR-20同様ガス圧の一部を後方に排出し反動を相殺する形式を採用、駐退機に比して5kg近い重量の軽減に成功した。
専用の三脚は角度を個別に調節できる他、先端に鋤を備え、回転させることで接地板としても利用可能。
接地したまま水平方向に回転し、仰俯角の調節には手回しのハンドルを用いる。
また本装備は三人で携行するため、工具を用いずワンタッチで分割、組み立て可能なように設計された。
銃身、ストック、カメラを繋ぐ4本のシャフトは銃身と並行で、射撃時にも反動が加わらない。
マルエージング鋼の銃身は張り出し部分を含め削り出しで成形され、2400m先で10㎝以内の精度を誇る。
本装備の閉鎖機構は水平鎖栓式だが、ボルトアクションと同様のレバーで装填と尾栓の開閉を行う。
尾栓のブロックには銃把と撃発機構も付属し、本体側に複雑な機構は内蔵されていない。
弾の有効射程を活かすべく、照準装置には極めて大きなコストが割かれ、光学式のスコープではなくRWS準拠の光学センサーが装備された。
センサーにはGPSに対応した火器管制装置が内蔵され、コリオリ偏差や気象情報を反映させた照準が液晶ディスプレイに表示される。
当初は全てのモデルに排気口が設けられていたが、熱帯で漏電による故障が多発し密閉された照準装置が急遽生産される運びとなった。
本装備の卓越した射程は中東の山岳地帯で猛威を揮い、40CTCとは対照的にイスラエルやトルコ等バレット82から乗り換える国が続出。
弾薬の普及に伴い、40CTCの利用も8か国に拡大した。
ちなみに装弾筒付翼安定徹甲弾の貫徹力が要求されるシーンは少なく、実戦では加害範囲の広いエアバースト弾が重宝されている。