ドローンと榴弾砲による視覚外戦闘が陸戦において大きな比率を占めるようになり、南アフリカ陸軍は旧式化しつつあるG-6に代わる長射程の自走榴弾砲を求めていた。
従来の装輪式自走砲では203㎜、50口径以上の榴弾砲を搭載するには難があり、主力戦車に匹敵する50t以上の装軌式の車体が必要となる。
オリファントの改修も提案されたが、ベース車自体も旧式化しつつあり、ダネルはより大きな反動を吸収可能な専用車体の開発を計画した。
G-8という型式が公表されたきり、その後数年にわたりメディアへの露出は皆無に等しく、着手から5年後に武漢のイベントで公開されたイメージは来場者に大きな衝撃を与えた。
履帯の幅を拡大するため、G-8は菱形戦車の構造を踏襲している。
車体上面に履帯を通したことで接地面積は19.6㎡に達し、全備重量が70tを超えるにもかかわらず時速53㎞の路外走行能力を実現した。
床面の下に配置するため小径の転輪を装備し、両側から支持することで捻じれを抑制している。
履帯と砲で上面がふさがっているため自衛用のRWSは正面に、運転手用のペリスコープや搭乗口は側面に設置された。
車体後部には1500馬力の星形9気筒ディーゼルエンジンが搭載され、発電機を介して左右のスプロケットをインバーター付きの同期電動機で個別に駆動する。
砲身が上下にしか稼働しないため、電動機にはミル単位での旋回に必要な位置決め能力が要求された。
重量が増加する代わりにトランスミッションに由来する故障はなく、時速20kmで45分間の走行に必要な蓄電池を搭載している。
射程を最優先した結果、G-8には203㎜64口径という大型の主砲が搭載された。
装薬量は最大72L、ベースブリードとGPS誘導機能を備えた射程延伸砲弾により有効射程は82㎞に達する。
当初は国内で203mmGPS誘導弾を開発する予定であったがセキュリティの問題で測位衛星の利用許可を取れず、中国政府との交渉の結果、中国航天科技集団公司製の弾薬を輸入せざるを得なくなった。
またシュートアンドスクート能力を向上させるため、主砲にはアーム式の自動装填装置ではなく回転弾倉が装備されている。
装弾数は12発のみだが、全弾を15秒以内に打ち切る発射速度を持ち、鋤の展開も不要なことから砲撃開始から30秒ほどで撤収が可能。
配備当初は前時代的と目されたものの、自動装填装置付きの自走砲でも移動せずに10発以上発射し続けることは危険であり、実践を重ねるにつれ評価が上向いている。
いくつかの陸軍が回転弾倉式に興味を示しているが、ガス漏れを防ぐリングの動作機構はダネルが特許を取得しており、未だ類似品の開発に成功した国はない。
3段のテレスコープ式駐退・複座機は6m近いストロークで反動を吸収し、速射性の向上につながった。
不使用時には油圧操作で砲身を後退させ、重心を安定させつつ障害物などへの接触を防ぐ。
照準は慣性航法装置やGPSによって行い、また人力での装弾も行わないため運転手、砲手、車長兼機銃手の最小3人で運用可能だが、座席は5人分用意され、小型ドローンやコリメーターを使用した砲撃にも対応している。
本車は将来的にG-6を全て置き換える予定だが、国内で配備が完了しているのは10両のみ、インド陸軍への輸出には中国から猛反発を受けてしまい、一時は弾薬の供給が停止される事態に陥った。
車両を新規開発した分単価は1000万ドル近くに上振れしており、ダネルは最低限のロットを確保するため陸軍に複数のバリエーションを提案している。
ただ車高が高く履帯が砲塔の設置を妨げるため、搭載可能なオプションは橋梁、トレンチャー、爆導索、クレーンなど工兵用の器材が主。
合計しても配備数は少なく大きなコスト軽減にはつながる見込みはないものの、搭載量の余裕は各種工作機械の大型化につながり、第一弾であるトレンチャーは公開演習において幅1m、長さ180mの塹壕を5分で掘削し観客を沸かせた。
また現場レベルでは後部に連結器を設置しトレーラーとして利用される例があり、不整地で戦車や20ftコンテナを輸送する姿が見られる。
発電機から手術室まで多様な既存の20ftコンテナが流用できることから、民生での利用も幅広い。