ふたり回し

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空警700型



急速な海外展開に伴い、人民解放軍では兵站、とりわけ海上輸送の負担が倍増している。

輸送船団の護衛にあたる筈の空母は配備が難航し、加えて海軍は艦上で運用可能な早期警戒機も保有していない。

既存の早期警戒管制機は航続距離は十分でも船団に随伴し続けることは出来ず、フリゲート艦の対空レーダーには見通し線上の限界があった。

海上で運用可能な早期警戒機の候補として浮上したのは、最大限に軽量化された無人回転翼機と、限定的ながら管制機能を持つ水上機である。

海軍は進出距離や単独での運用を重視し、20t級の水上早期警戒機「空警700型」の開発を哈爾濱飛機工業集団に命じた。

 

空警700型は胴体上部にレドームを外装せず、内翼の前後縁とフロートに一枚ずつ走査アレイを内蔵している。

かねてより回転式レドームの開発が遅れていることは解放軍の懸案事項であったが、回転式レドームを切り捨て主翼に分散配置したことが抗力の大幅な軽減につながった。

固定式のためスキャン速度が早く、戦闘機サイズの目標を距離800kmで5秒以内に捕捉することが可能。

操縦士と副操縦士の他、レーダー手と前線統合管制官に加え航空管制官二人が搭乗し、友軍機を管制するだけでなく、場合により各種ミサイルの終末誘導も担当する。

 

ベース機に足る十分な性能を持つ設計の新しい水上機がないため、空警700型はボディから新規に設計された。

范曄飛機設計研究所のサポートを受けた結果利剣や雲影の設計が反映され、主翼以外にも様々な外見上の特徴を持つ複雑な形状の機体に仕上がっている。

下面に窓を備えた舳先状の機首もその一つであり、NATOコードネーム「ピラルク」の由来にもなった。

計器類も天井側に並べられており、下方視界が広く離着水に便利だと現場における評価も高い。

機首上面は対照的にフラットな形状で、緩やかなカーブが機首自体に揚力を発生させる。

鋭いV字の船底は凌波性に優れ、スリット型の波消し装置も追加された。

US-1の影響を指摘されたこともあるが、海軍当局は基部を隠すためのレーダーブロッカーであるとして否定している。

通信用のアンテナは船底のフェアリング内に配置され、外装と並行に傾斜がつけられた。

船底を含め各レーダーのフェアリングにはXバンドの吸収率が高い複合材を使用し、早期警戒機ながら火器管制用の追尾レーダーには数キロ圏内に接近するまで捕捉されない。

垂直、水平兼用のV字尾翼はディープストールを防ぐためエンジンナセルの上面に設置され、また2m以上に大型化されている。

 

翼幅36.4mの主翼に加え、国産ターボファンエンジンの中でバイパス比が最も高い渦扇-20を単発で搭載することで、本機は8時間にわたる空中待機を実現した。

渦扇-20の断面積はキャビンとほぼ同等であり、胴体に内蔵することで抗力の軽減が図られている。

水飛沫や対空レーダーを避け吸気口は上面に設けられたが、コアンダ効果により気流を引きこむだけで大きく張り出したダクトは装備していない。

機首上面から気流が剥離すると同時にエンジンストールが発生するため、仰角は最大でも10度に制限されている。

単発機故の故障リスクはエンジンの信頼性向上によって克服されており、異常発生時にも滑空後に着水し対処できるものとされた。

自衛用の装備としてはエンジン横のチャインにチャフとフレアのディスペンサーをそれぞれ備えるものの、友軍艦の支援を受けられない空域での活動は想定されていない。

 

本機の登場により護衛船団の交戦距離は大幅に延長され、捜索レーダーの貧弱な22型ミサイル艇さえも搭載火器の射程を活かせるようになった。

場合によっては米国のイージス艦が先制攻撃を受ける可能性が出たことで、シーレーン上のパワーバランスが大きく変化しつつある。

ゼロベースである空警700型は生産ロットを確保するべく空中給油型と対潜哨戒型のバリエーションが計画されており、また現段階では高価格ながらも南アフリカミャンマーなど導入に前向きな友好国が存在する。