ルイエちゃんとフィンカちゃんを追いかけて、やっと走り出す私たち。
今日の野良ギアは、一体どんな形をしているのでしょうか。
「いた!二時の方向、そんなに大きくない!」
カム越しに、ルイエちゃんの声が聞こえます。
「フィンカ、東側からそこの交差点に追い込んで!ワノンとユニスは交差点で待機!」
野良ギアが小さい時は、フィンカちゃんは追いかける役。大きい時は、釣りの餌です。
フィンカちゃんは相手に合わせてゆっくり走るのが嫌いだそうですが、
野良ギアの足の速さは見てみないことにはわかりません。
私が囮をやっても、簡単に逃げられてしまうかもしれないし、逆に……
……吹き荒ぶ風が、砂の城を飲み込むのが見えます……
「任せな!」
いつも通り、フィンカちゃんはやる気満々でギアを走らせます。
やる気というのはつまり、チェイスにかける情熱です。
フィンカちゃんが追いかけるのは、日銭でもなければ平和の敵でもありません。
常温氷体の壁にぶつかる間際のとんでもないスリルだけです。
「なあ、ルイエ、追い越しちゃってもいいかな。」
「いいよ。私が合図するから、それまでローリングスタートね。」
さすがはルイエちゃん、乗りこなしてます。