ふたり回し

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移植ー8

舞台は山奥の廃村へ!

 

 製材所は天井も高く、広さだけならハンガーよりも遥かに余裕がある。深く考えずに荷物を置いても、後で整理に困ることはないだろう。半分が人間だったこともあり第一便はあっさりと片付いたが、大変なのはトラックを見送った後だ。片付いたと思った矢先に次のトラックが現れ、ロープを解くところから再スタート。それを四、五回繰り返した末、とうとう次の荷物の方が搬入作業を追い越してしまった。
「拙いねえ。これはいよいよ拙いことになって来たぜぇ、アレクくぅん」
 トラックがわざわざ役場前まで上り、広場で難儀しながらすれ違っている。既にビハインドが出ている分だけ持ち時間が減っているのだ。相当ペースを上げない限り、次はもっと大変なことになる。生唾を飲み込む音が互いに聞こえる気がしたが、助手席から声が聞こえてアレク達は顔を上げた。
「みんな、お疲れ。次の便で最後だよ」
 全員が班長を最大の歓声で迎え、トラックの幌を外しにかかった。しばらく休んでいたこともあり、第二班は気力十分だ。息も絶え絶えの第一班をよそに、見る見る荷物を片付けてゆく。ゴールが見えたこともあり、アレク達の身体も自然と軽くなった。
「俺達はどこに泊まることになるんだろ。一人一軒ってわけは……ないよな」
 空き家はいくらでも建っているが、一軒復旧するだけでも一苦労だ。手っ取り早いという意味では、まとめて山際のアパートに詰め込まれる公算が高い。無造作に段ボールを積み上げながら無駄口に混じっていたが、何の前触れもなく俄かにレフが思い出した。
「それよりアレク君よぅ、チミは再入院しなくていいワケ?」 
 そういえば、診療所が満員で追い出されてしまったきり一度もコルレルに診てもらっていない。なまじ体が動くばかりに、城で起きた異変を忘れかけていた。
「お陰様で、昨日よりマシだよ」
 カルラが探索を代わってくれているお陰か、実際調子そのものは戻りつつある。それでも搬入が終わり、寝床の割り当てを教えられた後、アレクはこっそりコルレルの居場所を尋ねた。
「役場で負傷者を見てるわ。大きな機械は持って来てないだろうけど」
 そもそもCTスキャナーどころか、この村には電源もないのだ。自らの問いの間抜けさに、アレクは両手で顔を覆った。杉林から蝉の声が流れ出し、生温い夕方を不確かに染めてゆく。気休めしか望めないなら、睡眠の方が幾分か実質的か。段ボール一箱に収まるなけなしの私物を担いで、アレクはレフ達の背中を追った。