ふたり回し

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天津級原子力空母

 

解放軍初の空母打撃群の編成後、海軍は福建級の運用実績を元に新型航空母艦の開発を検討していた。

解放軍ではかねてより紅牌級などの高速船を配備しており、高速船の技術を応用することで抗力維持しつつ飛行甲板の幅員を増加させられるものと見込まれた。

海軍が水面下で豪インキャットの協力を取り付け、秘密裏に開始されたのが世界初のトリマラン空母建造計画である。

当局は就航間際まで計画の存在そのものを高度に秘匿し、インキャットの関与も否定していたもののの、同社がランサムウェアの攻撃を受け2万4千件に及ぶテレグラムの通信記録が流出、経営陣が中国へ亡命する一大事となった。

 

シミュレーションの段階で船体の強度不足が問題となったため、設計チームはトリマランの採用を断念、二つの巨大なダクトにより造波抵抗と圧力抵抗を軽減している。

最大速力は43ノットに達し、また被弾時にも中央の船体が損傷から守られるものとされた。

船体の規模は福建を二倍近く上回っているが、船体形状により剛性を確保し構造材を削減しているため排水量は8万t弱しかない。

福建の反省から蒸気式のカタパルトを選択、合わせて動力にも170kW相当の原子力タービンが二基搭載されている。

スクリューは後退角、上反角とウィングチップを備えた連続的な三次元の曲面で構成され、単結晶チタン合金の削り出しで成形された。

 

天津級のもう一つの外見的特徴は、全通式を取りやめ、格納庫と同一のフロアに離陸用、着陸用の甲板を個別に備えている点にある。

甲板は着艦側がやや長い台形をしており、着艦、発艦レーン共に二本ずつ。

左右の甲板は個別にハッチを持ち、通路と吸排気菅を格納庫の後端に通すことで格納庫内の動線を確保している。

エレベーターが廃され重量が軽減されるとともに、甲板上で機体を待機させる必要がなくなったことで全機発進の所要時間が大幅に削減された。

加えて格納庫内の駐機スペースも広がり、J-15ならば最大70機を格納可能。

格納ブロック上にはアイランドではなくパネル式のレーダーを多数備えた大型の艦橋が設けられ、レーダー反射面積も漁船と同等に抑えられている。

 

一号艦天津の就役に伴い解放軍の外洋進出力は大幅に向上し、プレゼンスの増大はポリネシアの小国やブラジルとの防衛協定にもつながった。

二号艦澳門に続き、現在は三号艦深圳の建造が行われている。