ふたり回し

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拒絶ー14

兵器のネタは出尽くしたか……

 遅れることほぼ丸一日、カルラの怒りはいかばかりか。言い訳が増えるばかりで、時とともに冷めるなどということはおよそ期待できない。アレクは階段で立ち止まり、入道雲が空を這うのをぼんやりと眺めた。一昨日のように天気が悪いわけではないが、些か雲が多いようだ。城の天気が何を意味しているのか導き出すほどの材料はないが、日食が起こったことには何かしらの理由がある。あの後カルラも徹夜していたなら、今朝方城に来なかったことで責められることはないかもしれない。安上がりな気休めを得て騙し騙し歩くうちに足取りは軽くなり、中庭に着いた時には出たとこ勝負に望みを見出していた。
 幸いアレクが先だったらしく、木陰にカルラの姿はない。浅はかな溜息を足元に下し、ベンチに腰掛けお咎めを待つ。長閑な陽だまりには静けさが満ち、葉擦れさえも憚りながら僅かに下草が揺れている。アグラーヤが帰った後、鳴りを潜めること以外にできることはあっただろうか。待ち伏せされることを覚悟してもう一度脱走を試みたり、窓から合図を送るようなことは選ばなかった筈だ。以前のカルラなら、きっとアレクを止めさえした。凛として静かに佇む姿を瞼の裏に描き風に耳を澄ましたが、いくら待っても物音一つ聞こえてこない。手をついて立ち上がり奥の扉を見やったものの、帰るでもなく探しに行くでもなく、手に付いた木屑を払ってもう一度座り直した。
 誰かの扉を覗いているとしても、余りに帰ってくるのが遅すぎる。二人が隠しているだけで本当は何かが起こっていたのか、それともカルラに避けられているのか。油彩の空は凪より厚く、悩みの長さを覆い隠している。じきにあの木戸が開いて待ち人が現れたなら、ここで踏んだ二の足も疑わなかったアリバイになるかもしれない。都合のいい言い訳に延々しがみついたものの、扉が応えることはなくアレクはすごすごと引き返した。