生存報告がてら、3話から。
「お気になさらず、陰に入ってください。そのお召しものでは、つらいでしょう」
金縁のボタンを一番上まで留めていたため、
全身から汗が吹き出し、髪からは大粒の汗が滴っていた。
横目でちらりと千波をうかがい、鼻を鳴らす。
向こうに行きたくないのは分かるが、風音には傘をさしてくれる従者はいないのだ。
「護衛対象から離れるわけにもいくまい――お前こそ、なんで行かないんだ?」
「せっかく持ってこさせた日傘が無駄になってしまいますから。
・・・ごめんなさい、つき合わせてしまって」
うすら笑いを浮かべて、わざと聞いた風音にも、千波は無理に笑って答えた。
失敗だった。そうか、と呟き、眩しさに目を伏せて、小さなため息をつく。
苦々しい表情に、気を遣ったのか、千波はぼそぼそと続けた。
「初めからそのつもりできていますから――もっと傘を持ってこさせるべきでした」
ことばを探して、やけた石畳の上に視線を漂わせる二人を、じりじりと燃える太陽が照らしていた。
視覚中心の描写になってきたので、音や匂いも混ぜていかなくては・・・