ふたり回し

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山風蠱の解釈問題

ここにきて、大きな壁にぶつかった。

岩波の現代語訳、どころか書き下しが怪しいかもしれない。


山風蠱といえば、縁起の良くない卦の代表格。

女の子向けのガイドブックにも、学術的な解説書にも、「腐敗」「壊乱」「ウジ虫」etc…

「君子は風の徳によってこれを取り除かなければならない」けれど、

頑張れば「咎なし」というのがよくある山風蠱の解釈。


ところが、リシュンに書き下しを引用させようか……

と思って改めて確認すると、内容が全然違う。

出だしから「元に亨る」。

これは、易経でいうところの吉。

悪い卦の卦辞には大抵「利しからず」あるいはもっと直截に「凶なり」とある。

卦辞の引用だけでは、「悪い」という説明に説得力を持たせることが難しいのだ。


山風蠱は本当に悪い卦なのか不安になって探してみたところ、以下のページがヒットした。

静かなる細き声様 (易経勝手解釈:山風蠱)

氏の主張は蠱が遺体の腐敗を指しており、必ずしも難局を指しはしないというものだ。

年功序列の激しい古代中国で、親より子の方が出来がよかったのでは格好がつかない、

もとい、孔子御用達の易経が親の威厳を損なうのではつじつまが合わないというのがその理由。

また、後世の注釈が蠱を悪い意味に捉えている理由については、

葬儀が鳥葬から土葬に移行したことで、遺体を腐るにまかせることがなくなった、

腐ることから葬儀の意味合いが抜け落ちたためではないかと類推なさっている。


易経の中につじつまの合わない個所が点在しているのは、易経の古さと複雑な成立過程によるものだ。

先行する注釈に影響された注釈の積み重ねが原典に被覆され、

原典もさえも誕生から文書におこされるまでの間にどう変わっているか分からない。

占いや易経の正否を問う以前に、易経の解釈や、オリジナルからの乖離が怪しいものなのだ。


今まで行われてきた占いが、占う前から間違っていたかもしれない……

背筋の寒くなるような話だが、離巽の方はなんとか落とし所を考えなければならない。


参考)易経-Wikipedia