ふたり回し

小説投稿サイトとは別に連絡や報告、画像の管理などを行います

ハック&スラッシュにシナリオはいらない‐船旅2

それは、風のないある日のこと……

風のない日は、洗濯物を干す大事なチャンスです。

私は、今日の分と一緒に、中で干していた洗濯物お日様にあてようと思っていました。

ところが、ようやくハンガーをかけ終わろうとしたその時、

下からルイエちゃんの叫び声が聞こえてきました。

「野良ギアだ、みんな、いくよ!」


いつもルイエちゃんが号令をかけると、

フィンカちゃんはオムライス号を止め、はしごを駆け上がってきます。

私はフィンカちゃんのタンクトップを下ろして、

洗濯物かごに放り込みました。


「ユニス!ノラは見えたか?」

ハッチから顔を出したフィンカちゃんはあたりを見渡しましたが、

道路のわきには廃ビルが並んでいて、遠くまでは見えません。 

私は洗濯物をハンガーから外しながら、答えました。

「さっきからずっと、静かだったけどなぁ。」


フィンカちゃんはデッキに上がって、洗濯物を片付けるのを手伝ってくれました。

ギアが船を襲うのは、珍しいことではありません。

ハンガーも、洗濯バサミもお構いなし。

片っ端からかごに放り込んでいきます。


「こっちに向かってきてる!船から離れて戦おう!」

ルイエちゃんとワノンちゃんが、梯子を登ってきました。

「なかなか大きかったなぁ。先月分はこいつで取り返せるんちゃう?」

ワノンちゃんは左足のコアに手をかざして、ギアを引き出しました。

肌にふつふつと銀色の雫が汗のように吹き出して、

四角いケースの形を作っていきます。


「あのビルに登ってみる!」

ルイエちゃんはビルにワイヤーを打ち込んで、デッキを強く蹴り出しました。

ルイエちゃんはワイヤーを巻戻してビルを登ると、手を振って私たちを呼びました。

「こっちだ、ホテルの陰から仕掛けよう!」


「がってん承知!」

フィンカちゃんもギアを引出し、ルイエちゃんに続きます。

ワノンちゃんはオムライス号から飛び降りようとしましたが、

ふと私を振り返り、拳を握って叫びました。

「ユニス、洗濯バサミは外さんでええ!」