ふたり回し

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Be-312

温室効果ガス排出量の削減が航空業界の大きな課題となり、旅客機の大型化が加速する中、開封航空ショーにて西安飛行機工業公司は傘下のベリエフから超巨大飛行艇をリリースすると発表した。

当初は翼幅312m、客席総数2000という非現実的な数字のみが示され、機体の全容は明らかにされていない。

翌年の株主総会でイメージ画が公開されるまで、プレスの間では開発計画そのものが出資を募るための絵空事ではないかとも囁かれていた。

一方謎の飛行艇Be-Xは航空ファンにとって格好の話題であり、各メディアや模型メーカーはこぞって機体像の予想に乗り出したものの、予想図の殆どは全二階式単胴飛行艇であり実機とは大きくかけ離れている。

 

ベリエフ社はBe-312を双胴式飛行艇とカテゴライズしているが、胴内に客席はなく本機の概形はフロート式水上全翼機とでも表現すべきものである。

客室や貨物室は分厚い主翼内の空洞に配置され、フロート側に尾翼が取り付けられている点、エンジンポッドが機体下部に外付けされている点のみが全翼機の定義を逸脱していた。

フロートの形状にはウェーブピアーサーの設計が取り入れられ、離水時の抵抗が大きく軽減されている。

機体上部には本機の開発に際して新規設計された渦扇-二十六型を八発搭載。

モトール・シーチから技術者を引き抜き、ファンの直径3620mm、推力最大420kNの超大型ギヤードターボファンエンジンを完成させた。

 

全翼機はフラットな空間を設ける上で都合がよく、Be-312は空飛ぶ客船と呼ばれるほど多数の客席と充実した設備を備えている。

中でもひと際目を引くのは大きな窓で、巨大な層流翼の下面は前縁部がミラービルを思わせるアクリル張りにされた。

眼下に広がるパノラマは就航当初大きな反響を呼び、機首付近の個室を通年で押さえている企業や著名人も少なくない。

前縁は個室とファーストクラスに充てられている他、外側にはエコノミークラスの乗客も利用可能なキッズスペースが設けられている。

ビジネスクラスには個室やファーストクラスの後方、エコノミークラスにはフラップの前方、貨物室にはフロートが割り振られた。

客席以外の機能は中央部に集中しており、スタッフゾーンやトイレ、有料ラウンジでは細やかなステージも催される。

パイロンの内部には乗客用エレベーター三本、貨物用エレベーター一本が設置され、搭乗口はポンツーン側面に位置、故障への備えとして左右対称に構成された。

 

Be-312は現在五機までが就航し、ニューヨーク-アムステルダム-シンガポール-上海-ロサンゼルス間で運用されている。

また人民解放軍の海外展開に伴い空軍の長距離進出が要求されため、本機をベースに空中給油機轟油九型が開発された。

他に類を見ない大容量に加え、下面に増設されたブームを用いて洋上で補給艦から直接補給を受けるためメンテナンス以外で帰投する必要がない。

太平洋上に解放軍機が飽和する状況に米国防相は大きな危機感を抱き、競合機の開発を急がせている。

財政悪化を理由に4号機以降の受注がキャンセルされてしまい、製造途中の4号機は改修を加えられた後水轟十型として林業部が消防目的に導入するという異例の解決策が取られた。