ふたり回し

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HEAT851

各地の前線でトップアタックによる撃破報告が相次ぎ主力戦車の生残性に疑問が呈される中、スウェーデン陸軍は屋内からの砲撃手段を模索していた。

携行式の無反動砲は射程が短く、対戦車ミサイルは大型化し生産性も低い。

コストを抑えつつ1,200m以上の有効射程を確保するため、サーブ・ボフォースダイナミクスはバレルの延長とカウンターマスの増量により初速の向上を図った。

コンペティションにおいて試作モデルGrg m/30はクルップ社のLG29に速射性で劣ったが、分割して歩兵が運搬できる軽便さが評価され量産が決定。

このGrg m/30用に設計された対戦車砲弾が、HEAT851である。

 

HEAT851はカールグスタフ無反動砲の弾薬と同様、装薬により射出後ロケットモーターにより加速する。

生産性向上のため誘導装置をオミットすることが決定したものの、個人用携行擲弾発射機の有効射程や命中率は銃弾や誘導弾に比して著しく低い。

そこで初速を向上させるため、4,600kgの飛翔体に対し6,200gもの金属粉をカウンターマスとして放出することで腔圧の低下を遅らせる方法が選択された。

薬莢は可燃性の樹脂でできており、円筒形の尾翼と前後に繋がった安定翼によって弾薬に強度を持たせている。

弾体は初速437m/s、最高速度608m/sで直線的な弾道を描いて飛翔し、熟練者ならば800m以上離れた動目標に命中させることも可能。

直進安定性を損なわないよう、ノズルは安定翼よりも前方に配された。

 

HEAT851はタンデム弾頭の成形炸薬弾だが弾頭の違うバリエーションに多目的榴弾のHEDP802、対装甲榴弾のADM841、照明弾のIRRM845などが用意された。

各弾種の弾道を近づけるため弾頭の重量に合わせて装薬とカウンターマスの量が調整されている。

生産性の高さに後押しされ、Grg m/30は予備弾薬と共に5年足らずでスェーデンの支援火力を底上げした。

アフリカや中東には仕様の近いPSG-9からの乗り換え需要があり、徐々にシェアを広げている。

ニジェール内戦ではECOWASからレジスタンスに供与されたGrg m/30が猛威を奮い、政府軍との火力差を埋める働きをみせた。