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“積まない”事故対策

事故を減らすには、デッキ(の事故率)をマイルドにするべきです。

先日は、「事故」の内実をバラバラに考えることでこれを確かめました。

しかし、デッキはマイルドにするばかりでも、やはり勝てません。

事故を恐れずデッキを尖らせることの意義―

これもまた、「事故」の内容を考えることによって確かめることができます。


あらかじめ申し上げておくと、事故に関わる部位を増強することなく事故率を制御することは可能です。

けれども既に申し上げた通り、「長所」ならなんでも「短所」を補うのに役立つというわけではありません。

前回のお話を引き継ぐなら、安定性は加算されるものではなく、乗算されるもの。

デッキの性能の合計値などに意味はありません。

デッキの複合性能を決めるのは、各能力値の絶対値の和ではなく、能力値間の内積なのです。

(もちろんただの比喩です。あしからず)


・能力の絶対値に意味はない

デッキのもつ能力、すなわち、ハンデスの厚さやビートダウンの速さなどは、絶対値で考えるべきものではありません。

そうした諸能力に関して量的な議論をするなら、指標は二つだけ。

「足りているかどうか」と「余っているかどうか」です。

厳密に言うなら、能力が「足りていない」ときと「余っている」ときには、能力の寡多は無意味です。

能力の寡多というものは、能力が「足りていて」「余っていない」とき初めて問題になるものなのです。

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「足りていない」領域を不足、「余っている」領域を過剰と表現しました。

その間にあるのが、過不足のない「適正」の領域です。

例えば防御力が「足りていない」場合、「紙装甲」と「無装甲」の違いなど高が知れたもの。

いつも殴りきられてしまうなら、防御力は多かろうが少なかろうが同じです。

逆に、ドローが「余っている」場合もやはり、「潤沢」と「無尽蔵」の間に大した差はありません。

使いきれない手札は、ないのと同じだからです。


ここまでが直前の段落の詳しい説明です。


ここまでの議論を踏まえれば、一足飛びかもしれませんが、デッキ調整のあり方が見えてきます。

個々の能力値に関して言うなら、能力値を「適正」の領域に着地させることこそがデッキ調整の目的です。

さらに欲をかくなら、「適正」の領域のうちで「過剰」ギリギリまで能力値を高めることも重要です。


ですから、最も重要な調整は「不足」している能力を「適正」まで引き上げる調整です。

ついで重要なのは、「適正」の中で能力を向上させる調整です。

逆に、「不足」している能力を「不足」の領域の中でちょっとやそっと上げてもしかたありません。

また、「適正」な能力を「過剰」な領域に引き上げること、「過剰」な能力をそれ以上あげることにも意味がありません。

「過剰」な分の能力は、そもそも死んでいます。

ましてや、不足を補う役に立つわけがありません。


・“積まない”事故対策

では、本題「デッキに不足している能力を増強以外の方法でカバーすることは可能か」について。

答えは、もちろんイエス*1

そのためには、「事故」と「安定性」という二元論を捨て、個々の「事故要因」を発見する必要があります。

「事故」を「デッキが要求された能力を発揮できない状態」だと考えるなら・・・

事故要因の正体は、「デッキへの能力の要求」。

能力を要求させないように工作することで、事故を防げばよいのです。


それでは、我々がコンタクトを取るべき人物、能力を要求している張本人とは一体誰でしょう。

それは、デッキに課せられた作戦、タイムテーブルです。

例えば「5ターン目にロストを打ち込む」という作戦は、二段階のブーストとロストソウルのドローを要求します。

タイムテーブルの要求の高度さは同時に実現しにくさ、事故り易さでもあります。

私の知りうる限りで一番の無理難題は「1ターン目にバーレスクを召喚する」です。

いかがでしょう、いかにも事故りそうな響きではありませんか。


このような無茶なタイムテーブルを、「妥協する」と言わずとも容易なものに修正することで事故は防げます。

達成不能な要求をするタイムテーブルを、達成可能な要求をするタイムテーブルに修正するわけです。

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ただし、これはデッキの「爆発力」を下げることを意味しているわけではありません。

高速ブーストが駄目なら、相手の足を引っ張ればいい。

あるいは、より軽いフィニッシャーを使えばいい。

たどる道筋を換えても、最終的な強さの到達点を維持できることは多々あります。


デッキの性質として「安定性」があるわけではありません。

事故は、そして事故要因は、タイムテーブルの上に生まれるもの。

タイムテーブルを修正してデッキへの要求を減らせば、事故要因を根本的に摘み取ることができるのです。


・デッキを襲う“自然災害”

ここまでは、事故を防ぐための構築術を中心にお話を進めてきました。

しかし、事故をひきおこす要因は、内的なものだけではありません。

むしろ、デッキに外側から加わる圧力、相手のデッキによって起こる事故の方が多いくらいです。


デュエルの半分は足の引っ張り合い。

ハンデスを受ければ手札事故が増え、ランデスを受ければ色マナ事故が増えます。

ロックデッキ相手には除去不足に、速攻相手にはトリガー不発で泣かされるかもしれません。

相手の妨害はそのものが自分のデッキに対する要求であり、最大の事故要因です。

こうした要求にこたえることができないデッキは、苦戦を強いられることでしょう。

ましてや、もともと大きな事故要因を抱えているデッキが妨害を受けてしまったら・・・

ハンデスの得意なデッキにとって、4試合に1回の手札事故はタナボタの材料ではありません。

確実につくことのできる弱点なのです。


相手に要求する能力は、デッキによって様々です。

大きな大会になればなるほどいろいろな相手と戦うことになり、時に予想外の相手とも戦わなくてはなりません。

トーナメントの組まれ方次第で、同じ調整が正解になったり、不正解になったりすることもあります。

当日参加者がどんなデッキを使ってくるか、トーナメントがどのように組まれるか、だれが勝ちあがるか・・・

デッキが勝ちあがるために必要な能力は、その時が来るまで本当の意味で明らかにされることがありません。

トーナメントとの戦いは、降ってわいた災難、起こるか起こるかわからない災害との戦いです。


ただし、こうした災害の多くは、確認は出来ずとも予測のきくものです。

下馬評や周囲の様子から当日のデッキ分布を予測すれば、有効である可能性が高い対策を行うことができます。

そして逆に、無駄な対策を行わずに済ませることもできます。

コントロールの少ない大会では手札事故が起こりにくく、ビ-トの少ない大会ではトリガー不発は起こりにくいもの。

デッキのスペースは有限なのだから当たりそうもないデッキの対策をすることはありません。

あるいは、周りのデッキがかってにやっつけてくれそうなデッキを無視するのも立派な作戦です。



というわけで、少々長引きましたが事故のお話を終わります。

事故要因はデッキの中にあるのではなく、デュエルの中で生まれるのだということ。

そして、事故要因そのものをしっかり制御すれば、事故への対処は最小限で済むということ。

この二点だけ押さえていただければ、無暗にエンジンを拡張したり無用な平積みにスペースを取られることはないでしょう。

最後に回したせいで環境についてあまりお話しできませんでしたが・・・

環境については、またおいおいお話しするとしましょう。


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*1:ダリアン風に