ふたり回し

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離巽

☶☴(山風蠱)――その37

しばらく駆け引きが続きます。 やっぱり詰めるところが多くて大変ですね…… 36より続く シャビィがランプを掲げると、物乞いを装った二人組は鼻息荒く階段を駆け下りてきた。 「女、逃げられると思うなよ。」 光の底にリシュンの影を見つけて大口を叩いたも…

☶☴(山風蠱)――その36

やはり私は物理的なシーンを書くほうが得意みたいだ。 静かなシーンを中心に練習したほうがいいのかもしれない。 35より続く リシュンは振り向かず、同じ速さで歩き続けた。人目につかない裏通りだ。気づかれたと分かったら、追手はなりふり構わず力ずくで…

☶☴(山風蠱)――その35

大晦日に更新できて、よかったということにしておこう。 次回は急展開なので、お見逃しなく。 34より続く 禅僧たちに見つからないよう、リシュンは寺院の近くを通ることを避け、海沿いを反時計回りに歩いて隠れ家を目指した。黄色い空はじっと眺めていられ…

☶☴(山風蠱)――その34

年末で色々忙しいので、なかなか思うように進まない…… 33より続く 禅僧達の目を盗んでどうにか歓楽街を離れると、リシュンは南の大通りに向かった。仕込みはこれで十分だ。ここから先は、シャビィの出番もあるだろう。海沿いに渦巻く人ごみに棹をさし、回…

☶☴(山風蠱)――その33

間が空いてしまったので、今回は二回分。 32より続く 「お取り込み中失礼いたします。」 リシュンは恭しく跪いた。 「いえいえ、よう来てくださった。弟子たちが戻ってくるまで手持ち無沙汰です故、どうか好きな席にお掛けくだされ。」 恐れ入ります。リシ…

☶☴(山風蠱)――その32

ついに門主と接触したリシュン……といっても、駆け引きが始まるのは次回から。 31より続く 少年は店先で足止めを食らったが、店員が少年の話に乗ったのか、店からあのヘムという禅僧を連れ出してきた。ヘムが少年を問い質す様子は遠目にもなかなか凄みがあ…

☶☴(山風蠱)――その31

次回からいよいよ本番といったところ。 30より続く 西の大通りへ続く道に門主の背中が消えてゆくのを見送り、リシュンは立ち上がった。今なら店主も他人の注文をとっている。 「いけない!」 気づいた店主が、声をかけた。 「いかがなさった?」 リシュン…

☶☴(山風蠱)――その30

相変わらず食べ物に弱いな私……なんとかせねば。 29より続く 腐敗地区を東に出て、住宅地の大階段を上り、リシュンは寺院の脇に軒を連ねる茶屋の中で、一番好いている店に入った。貧相な八間が1つぶら下がったきりの明るすぎる店の中には、時間帯も手伝っ…

☶☴(山風蠱)――その29

若干短いが、シーンの切れ目なのでこんなものだろうか? 28より続く 「『井は邑を改めて井を改めず。喪(うしな)うなく得るなし。往来井を井とす。汔(ほとん)ど至らんとしても、また未だ功あらざるなり。その瓶をやぶる、ここをもって凶なるなり』。国は変…

☶☴(山風蠱)――その28

明日もう一本、いけるかな? 27より続く 水がめを抱えて階段を上り下りするのは、なかなかの重労働だった。両手と視界のふさがったまま、先を行くリシュンに導かれてなんとか部屋に戻ったときには、シャビィの体はすっかり流れる汗の下。顔は真っ赤にのぼ…

☶☴(山風蠱)――その27

間が空いたせいでスピードが落ちている。踏ん張れ、私。 26話より続く シャビィは言われるまま、リシュンについて昨日の道を引き返した。かめを担いで階段を上り、柱廊を抜け、螺旋階段を下りてゆくと、水汲み場には先客がいた。 「あら、リシュンちゃん、…

☶☴(山風蠱)――その26

少し間が空いてしまったが、気を取り直して。 25より続く 翌朝、シャビィは物音で目を覚ました。明るいながらも部屋の中が見えるのは、まだランプが消えていないからだろう。蔵の中で寝過ぎたせいか、ゆうべはなかなか寝付けずに、かすかに聞こえるリシュ…

☶☴(山風蠱)――乙

15話から25話を一括。 甲より続く 地下水路には、冷たく、そして湿った風が流れていた。冷えきった手足が水滴に覆われ、水気を吸った衣が体にまとわりつく――山の上で雲に呑まれた時と同じだ。 「驚いたな。まさか足下にこんな空間が広がっていたなんて。ここ…

☶☴(山風蠱)――その25

若干突貫工事になってしまった感があるので、後から手を入れるかもしれない。 24より続く リシュンの考えを聞いて、シャビィは両手で頭を抱えた。 「まさか、そんなことまで……」 うろたえるシャビィをリシュンは慰めた。 「シャビィさんが気に病むことはあ…

☶☴(山風蠱)――その24

加速度的に長くなってきたが、これは一体どうしたものか…… 23より続く 「二週間近く前になりますか。寺院の資金源を怪しんだ私は、早速寺院の周りに探りを入れました。占い師にとって、ネタは資本ですからね。」 霊感に頼っているかのように見える占い師だ…

☶☴(山風蠱)――その23

今週中にこの会話を最後まで……なるか! 22より続く 分厚い唇をきっと結んで足を組み直し、シャビィはゆっくりと鼻から息を吐き出した。 「一体どうすれば老師たちは考え直してくれるのでしょうか。私は……私には、うまく説得する自信がありません。」 溜息…

☶☴(山風蠱)――その22

少し間が空いてしまったが、2シーン分書きすすめたので遅れはない……はず。 その21より続く そうか、胡椒だ。シャビィが声をあげた。 「見たんです。殴られる前に。床一面に黒い粒が広がって――」 口の中で弾ける鋭い香り、冷たい床を胡椒が転がる乾いた音…

☶☴(山風蠱)――その21

一話ずつが長くなってきた。 これ以上話数が増えるのも、しかし…… 20より続く 蝶番のきしむ音とともに、シャビィが外から帰ってきた。 「お待たせしました。」 シャビィから釜を受け取ると、リシュンは念のために中を確かめた。大丈夫だ。米が減っているよ…

☶☴(山風蠱)――その20

設定のややこしいところがあって、少々間が空いてしまった。 次回で挽回したい。 19より続く リシュンが扉を押し開くと、錆びついた蝶番が小さく不平を訴えた。疲れ切ったランプの陰りの中に浮かび上がった部屋の広さは、一人暮らしがやっと営めるくらいだ…

☶☴(山風蠱)――その19

やや長引いてしまった感があるが、せっかくの迷路なのでこれくらいしなくては損だろう。 18より続く 細長い楔形の広場は、左右の家の間に撃ちこまれた格好になっている。左手に見えるのは、恐らくいびきをかいていた男の家だ。朽ちかけた木戸に、手書きの…

☶☴(山風蠱)――その18

ようやく路地の描写に入れた。 アゲインスターズもびっくりのアジアンカオスに突入だ。 17より続く リシュンはシャビィの目を見つめ、静かに頷いた。 「それでは参りましょう。この先に井戸があります。」 そこから井戸までは、いくらも離れていなかった。…

☶☴(山風蠱)――その17

開催するまでもなくチャット会が役に立っている。 次第にペースが上がってきた。 16より続く 「リシュンさん、何が起こったんですか?」 シャビィの手からランプを取り返し、リシュンはゆっくりと地面に下ろした。 「ただの近道ですよ……ほら、そこにもさっ…

☶☴(山風蠱)――その16

のんびりしたシーンなので、比較的緩めに書いている。 本当の正念場はもう少し先になりそう。 15より続く しばらく進むと、道が水平になった。滑りやすい足場に苦戦していたシャビィは突然与えられた中休みに胸をなでおろしたが、リシュンは急に立ち止まり…

☶☴(山風蠱)――その15

ここからしばらくはのんびりしたシーンが続きそう。 今のところきちんと食事のシーンなんかも挟んでいく予定だ。 14より続く 地下水路には、冷たく、そして湿った風が流れていた。冷えきった手足が水滴に覆われ、水気を吸った衣が体にまとわりつく――山の上…

☶☴(山風蠱)――その14

二人が合流して、やっと本編に入れたような気がする。 自然と筆を握る手にも力が……力入れろ―、私! 13より続く シャビィが身をかがめて蔵から出てくると、リシュンは慎重に扉を閉め、閂をかけると、脇に転がしてあった南京錠をかけ直した。 「リシュンさん…

☶☴(山風蠱)――その13

随分とタイトルに手間取ってしまった。 今までの遅れを取り戻そう。 12より続く シャビィは足を止め、震える目でリシュンをまじまじと見つめた。リシュンは一対、何をどれだけ、どのような経緯で知っているのだろうか。涼しい顔は少しも表情を滲ませること…

☶☴(山風蠱)――その12

リシュンが登場して若干平和な展開。 シャビィの心変りが必要なので、この次はちょっと大変かもしれない。 11より続く 何の沙汰もないままに、淀みきった光の底を時間だけが滔々と流れ去って行った。まだ日も昇っていないというに、カタリム山で過ごした日…

☶☴(山風蠱)――その11

いよいよ事件が発生。 次回はリシュンの出番もあるかも。 10より続く 気がつくと、シャビィは光の中に横たわっていた。広さも分からないこの部屋は、玄室さながらの黴臭さに満たされている。シャビィはしばらくの間細めた眼をしばたかせるばかりで、四肢を…

☶☴(山風蠱)――その10

いつもより短いが、シーンの切れ目なのでここまで。 9より続く ほどなくして、シャビィの足下に地階の床が現れた。階段と同じ幅の廊下の両側に、いくつかの扉が並んでいる。左右の扉を見比べながら廊下を進み、とうとう突き当たりまで来てしまったシャビィ…

☶☴(山風蠱)――その9

遅れた理由については、また機会を改めて。 上より続く。 濁った欠伸を噛み殺しながら、シャビィは桶の中に豆腐を並べていた。寺院に戻って手が空いたはよいが、気が昂ってなかなか寝付けず、眠い目をこすりながら明日の会食の仕込みを邪魔させてもらってい…